会社で転んだら労災?何もないところや通勤中に転倒しても労災は認められる?

転倒事故の責任は自分?会社?
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転倒事故は労災の中でも最も多く、厚生労働省の統計によると、2023年における「墜落・転落」を原因とする労働災害の発生件数は36058件です(参照:厚生労働省HP「労働者死傷病報告」による死傷災害発生状況(令和5年確定値))。
会社で業務に起因して転んだ場合や通勤経路で転んだ場合には、何もないところで転んだとしても、労災認定自体はされることが多いです。
転倒が労災認定された場合、労災保険から治療費(療養補償給付)、休業補償(休業補償給付)、後遺障害の補償(障害補償給付)を受けることができます。
また、何もないところで転倒したということではなく、会社が安全対策を怠ったために転倒したなどの場合には、会社に対して慰謝料などの損害賠償金を請求することができます(これは労災に限った話ではなく、会社の施設を利用していた顧客が転倒したという場合でも同じです。)。
このページでは、法律事務所リンクスの労災に強い弁護士が、「転倒が労災認定されるための条件」「転倒で労災から受け取れる保険金」「転倒で会社に損害賠償請求できる場合」などについてわかりやすく解説します。
転倒が労災認定されるための条件
転倒が労災と認められるためには、業務災害または通勤災害と認められる必要がありますが、次のような場合でも労災と認められます。
- 業務中にトイレに行く途中で転倒した場合
- 屋外作業で水分補給のため水を購入しに行く途中に転倒
- 休憩時間中に会社の施設を利用していて転倒
- 出張で宿泊施設を利用中に転倒
これに対し、次のような場合には、私的行為による転倒とされ、労災とは認められない可能性が高いです。
- 休憩時間中に運動をしていて転倒
- 休憩時間中に外出をしていて転倒
- 通勤経路を外れた後の転倒
- 通勤経路にあるコンビニで買い物で転倒
転倒で労災保険から受け取れる保険金
転倒で労災認定された場合、次のような労災保険金を受け取ることができます。
・療養(補償)給付:転倒によるけがや病気の治療費
・休業(補償)給付:転倒が原因で休業したことで賃金を得られなくなったことの補償
・障害(補償)給付:転倒が原因で後遺障害等級が認定された場合の補償
療養(補償)給付
療養(補償)給付は転倒によるけがや病気の治療費の補償です。
治療を受ける際、労災指定病院の窓口で「労災保険を使いたい」と伝えれば、労災被害者本人は自己負担なく治療を受けることができます。
労災指定病院以外で治療を受ける場合は、まず自分で治療費を全額支払い、あとから労働基準監督署に療養(補償)給付の請求を行うことになります。
療養補償給付の金額に上限はなく、治療に必要な費用については補償してもらうことができます。
休業(補償)給付
休業(補償)給付は転倒が原因で休業したことで賃金を得られなくなったことの補償です。
休業(補償)給付の金額は「休業4日目以降の賃金の60%」で休業3日目までは支払われません。
休業(補償)給付の計算式は、「給付基礎日額×(労災による休業日数-3日)×60%」ということになります。
給付基礎日額とは1日あたりの所得のことで「事故前3か月で受け取った給料の合計÷事故前3か月の日数」で計算します。
例えば、月給が30万円(3か月で90万円)で、事故前3ヶ月の日数が90日だった人の場合、給付基礎日額は1万円になります。
給付基礎額が1万円の人が10日休業した場合、休業(補償)給付の金額は「1万円×(10日-3日)×60%」=42000円ということになります。
障害(補償)給付
障害(補償)給付は、転倒が原因で後遺障害等級が認定された場合の補償です。
障害(補償)給付の金額は、後遺障害1級~14級に応じ、次の表のとおり支払われます。
後遺障害1~7級が認定された場合、障害補償年金・障害特別年金・障害特別支給金が支払われ、後遺障害8~14級に認定された場合、障害補償一時金・障害特別一時金・障害特別支給金が支払われます。
障害(補償)給付について詳しく知りたい方は、「労災の後遺障害等級の金額は?障害補償給付を等級表でわかりやすく!」をご覧ください。
等級 | 障害補償年金
(給付基礎日額) |
障害特別年金
(算定基礎日額) |
障害特別支給金 |
1級 | 毎年313日分 | 毎年313日分 | 342万円 |
2級 | 毎年277日分 | 毎年277日分 | 320万円 |
3級 | 毎年245日分 | 毎年245日分 | 300万円 |
4級 | 毎年213日分 | 毎年213日分 | 264万円 |
5級 | 毎年184日分 | 毎年184日分 | 225万円 |
6級 | 毎年156日分 | 毎年156日分 | 192万円 |
7級 | 毎年131日分 | 毎年131日分 | 159万円 |
障害補償一時金
(給付基礎日額) |
障害特別一時金
(算定基礎日額) |
障害特別支給金 | |
8級 | 503日分(一度だけ) | 503日分(一度だけ) | 65万円 |
9級 | 391日分(一度だけ) | 391日分(一度だけ) | 50万円 |
10級 | 302日分(一度だけ) | 302日分(一度だけ) | 39万円 |
11級 | 223日分(一度だけ) | 223日分(一度だけ) | 29万円 |
12級 | 156日分(一度だけ) | 156日分(一度だけ) | 20万円 |
13級 | 101日分(一度だけ) | 101日分(一度だけ) | 14万円 |
14級 | 56日分(一度だけ) | 56日分(一度だけ) | 8万円 |
転倒で会社に損害賠償請求できる場合は損害賠償請求できる金額や事例は?
転倒で会社に損害賠償請求できる場合
転倒で会社に損害賠償請求できるのは、会社に安全配慮義務違反が認められたり、会社が使用者責任や工作物責任を負う次のような場合であり、何もないところで転倒した場合などには認められません。
義務・責任 | 内容と転倒事例 |
安全配慮義務 | 会社が転倒事故が発生しないよう安全対策を取る義務がある場合に損害賠償責任を負う 例:会社が転倒が発生する危険な方法で作業することを放置し安全対策を取らなかった場合に損害賠償責任を負う |
使用者責任 | 従業員が他の従業員や第三者に損害を与えた場合にその従業員の使用者である会社が連帯して損害賠償責任を負う 例:従業員が機械の使い方を誤って他の従業員を転倒させてけがをさせた場合に雇用している会社も連帯して損害賠償をする |
工作物責任 | 土地に設置された工作物が安全性を欠いていたことで労災が発生した場合にその占有者・所有者が損害賠償責任を負う 例:会社が設置した足場が壊れたり穴が開いていたために従業員が転倒してけがをした場合に会社が損害賠償責任を負う |
転倒で会社に損害賠償請求できる金額
会社に対して請求できる損害賠償金は次のとおりです。
- 治療関係費:病院への交通費、入院にかかる雑費、車いすなどの器具にかかる費用などの賠償
- 休業損害:転倒によって仕事を休んで収入が減少したことに対する賠償
- 慰謝料:転倒によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料
- 逸失利益:転倒によって将来得ることができなくなった収入の賠償
転倒で会社に損害賠償請求して1400万円余りが認められた事例(名古屋地裁令和3年2月26日判決)
事案の概要
郵便局の従業員が、郵便局の駐車場内の発着場において、運送用トラックの荷卸し、積荷に用いる昇降機付近を通行しようとした際に、昇降機が上昇したため、転倒したという事故で中心性脊髄損傷を負い、後遺障害等級5級の1の2に該当する後遺障害が残ったとして、郵便局に対して、損害賠償請求しました。
安全配慮義務違反の有無
従業員側は、郵便局は、職員が移動に使用するための安全な通路を設ける義務や昇降機による危険を防止する義務を負っているのにこれらの義務を怠ったなどと主張しました。
これに対し、郵便局側は、昇降機付近を通過してはならないと注意していたにもかかわらず従業員はこれを聞かなかった、安全な通路を設ける義務はないなどと主張しました。
裁判所は、郵便局側が、職員が安全に通行できる通路を確保するか、本件昇降機付近を通過しようとする職員が、確実に本件昇降機が稼働することを認識できるようにする等、本件昇降機による事故を防ぐ義務を負うとした上で、安全な通路を確保しておらず、また、本件昇降機の稼働を知らせる措置を取っていなかった点において安全配慮義務違反が認められるとしました。
従業員側の落ち度による減額
他方で、裁判所は、従業員側にも、本件事故時に、昇降機付近を通行するのが危険であると認識し、昇降機が停止するまで待つか、少なくとも昇降機を稼働させていた者に通行可能であるかを明確に確認するべきであり、これにより容易に本件事故を避けることが可能であったのに、これを怠った過失があり、従業員が郵便局に長年勤務し、本件事故時の状況により、昇降機が稼働しうることや、稼働した際の危険を十分認識していたことなどを考慮すれば、その過失は5割と評価するべきであるとして、損害賠償金を5割減額し、1400万円余りの損害賠償を命じました。
転倒による労災について弁護士に相談するメリット
転倒による労災が発生した際、弁護士に相談するメリットはたくさんあります。
- 面倒な労災申請の手続きを弁護士に一任できる
- 労災で適切な後遺障害認定を受けられる可能性が高まる
- 弁護士に依頼することで、獲得できる慰謝料が高額化する可能性が高まる
- 会社との示談交渉を弁護士に一任できる
- すべての工程を弁護士に一任できるため、本人はけがの治療に専念できる など
会社との示談交渉は、自分でやろうとすると相手にしてもらえない可能性が高いだけでなく、会社と対立することになるため、大きな精神的ストレスがかかります。
弁護士に依頼することで、示談交渉がスムーズに進むだけでなく、後遺障害が適切な等級に認定されることなどによって、慰謝料の金額がアップする可能性が高まります。
転倒による労災のまとめ
仕事中や出勤中に転んでけがをした場合、労災認定される可能性があります。労災認定された場合、労災保険から、各種保険金を受け取ることができます。労災保険を利用するには、自分、もしくは会社が請求の手続きをしなければなりません。
労災の発生に関して、会社にも落ち度がある場合、会社に対して損害賠償金を請求できる可能性があります。被害の程度にもよりますが、損害賠償金は高額化する可能性もありますので、自己判断せず、請求できるかどうかなどを、労災に強い弁護士に相談しましょう。
法律事務所リンクスでは、労災に強い弁護士が無料電話相談を受け付けています。わかりやすく説明いたしますので、お気軽にご利用ください。
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これまでご説明してきたとおり、労災は労基署と会社という2つの組織を相手にしなければならない上に、手続きも複雑であるため、労災で怪我をした本人やそのご家族だけで進めていくことには限界があります。
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このコンテンツの監修

弁護士法人法律事務所リンクス
代表弁護士 藤川 真之介
全国の労働災害の被害者の救済のため無料電話相談に取り組む。京都大学法学部卒業。2007年弁護士登録(日弁連登録番号35346)。京都弁護士会所属。2015年に法律事務所リンクスを設立し、2016年に弁護士法人法律事務所リンクス(日弁連届出番号1030)として法人化。現在、東京と京都にオフィスがある。