【交通事故Q&A】<3級の慰謝料>後遺障害3級の慰謝料・逸失利益の相場が知りたいのですが?
<3級の慰謝料>後遺障害3級の慰謝料・逸失利益の相場が知りたいのですが?
後遺障害3級に対する適切な補償(慰謝料・逸失利益)とは?
後遺障害の補償は、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益から成り立っています。
後遺障害3級に対する適切な補償=後遺障害慰謝料+後遺障害逸失利益
保険会社の提示する示談金は、最低補償である自賠責基準かこれに少し上乗せした金額を提示してくることが多いです。
後遺障害3級の慰謝料の相場
後遺障害3級の場合、自賠責基準による慰謝料額は861万円、補償限度額は2219万円(慰謝料・逸失利益を含む限度額)となります。
保険会社が、被害者に補償を支払う場合、自賠責基準の補償額までは自賠責が負担しますが、これを超える額については保険会社の自己負担ということになりますので、できる限り自賠責基準に近づけて支払おうとします。
しかし、本来支払われるべき後遺障害の補償は、このような金額ではありません。
本来支払われるべき裁判所基準の後遺障害の補償
本来支払われるべき後遺障害の補償は、裁判所が定めています。そして、裁判所は、後遺障害の補償について、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を定めています。
後遺障害の補償とは後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を合計した額になりますので、確認しておきましょう。
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裁判所基準による後遺障害3級の慰謝料
後遺症が残ったことで受けた精神的苦痛に対する補償で、後遺障害等級によって決まります。後遺障害3級の場合、裁判基準で定められた後遺障害慰謝料は1990万円~2000万円です。
後遺障害等級が同じ3級であっても、自賠責基準の約861万円(2020年3月31日までに発生した事故の場合829万円)に対して、自賠責基準と裁判所基準では1000万円以上の差額が生じます。
後遺障害3級の逸失利益
後遺障害逸失利益は、後遺症が将来の仕事・家事に与える影響に対する補償です。次の3つの数字を掛け合わせて、補償額を決めることになります。
- 被害者の収入(職がない方の場合は働いたら得られる見込みのある収入)
- 後遺障害等級ごとに決まっている労働能力喪失の割合
- 後遺障害が将来の仕事・家事に影響を及ぼす期間(労働能力喪失期間)
後遺障害逸失利益の計算は事故前の基礎収入が基準に
逸失利益の計算では、被害者が交通事故に遭う前の収入である基礎収入が基準となります。会社に勤めている人であれば給与をもとに計算するのでおおむね問題はないですが、事業所得者や専業主婦(主夫)の場合は注意が必要です。
事業所得者の逸失利益の算定方法
事業所得者の場合、事故前年の確定申告額による収入から固定経費以外の経費を差し引いた金額を基準とします。余計な経費も差し引かれてより低い金額を基礎収入額として計算されていないかを事前に確認しておきましょう。
専業主婦の逸失利益の算定方法
専業主婦の場合は、一般的に厚生労働省の統計である「賃金センサス」という女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入として計算します。「賃金センサス」によると、令和元年の女性労働者の全年齢平均給与額は388万0100円です。
後遺障害3級の場合、②は100%、③は症状固定から67歳までとされていますので、後遺障害の内容や被害者の収入・年齢によって、次のような後遺障害逸失利益が認められることになります。
収入・仕事 | 年齢 | 逸失利益 |
---|---|---|
20代男性(平均賃金) | 25歳 | 547万×1×17.4232=9530万 |
主婦(女性平均賃金) | 40歳 | 388万×1×14.6430=5681万 |
会社員(年700万) | 55歳 | 700万×1×8.8633=6204万 |
後遺障害3級の補償
3級の後遺障害の補償は、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を合計した次の金額になります(後遺障害の補償とは別に休業補償や慰謝料は支払われるので、実際に示談する額はより大きくなります)。
収入 | 逸失利益 | 慰謝料 | 合計 |
---|---|---|---|
20代男性 | 9530万 | 1.15億 | |
主婦 | 5477万 | 2000万 | 7477万 |
年700万 | 6204万 | 8204万 |
後遺障害認定の流れ
次に、後遺障害の認定を受けるまでの流れを説明します。後遺障害の認定には、申請自体を保険会社に任せる「事前認定」と申請を自分自身で行う「被害者請求」の2つの方法があります。
事前認定の場合
事前認定の場合、後遺障害認定を受け保険金の支払を受けるまでの流れは、以下の通りです。
- 被害者から相手方の任意保険会社へ後遺障害診断書を提出する
- 任意保険会社が書類・資料を収集し、自賠責保険会社へ申請
- 自賠責保険会社の調査部門である損害保険料率算出機構で調査の上、認定
- 認定結果が保険会社経由で申請者へ通知
- 等級に応じた保険金の支払いを受ける
被害者がやるべきことは、加害者側の任意保険会社へ後遺障害診断書を提出するだけ。残りの必要書類や資料は相手方任意保険会社が揃え、自賠責保険会社に提出され、被害者はただ認定結果が届くのを待ちます。
被害者請求の場合
一方、被害者請求の流れは以下の通りです。交通事故証明書・後遺障害診断書などの必要書類や資料(MRI・レントゲン写真等)を被害者自らが集めることになるため、事前請求に比べて少し手間が増えます。
- 被害者が必要書類・資料をすべて収集する(必要な書式は相手方自賠責保険会社から取り寄せる)
- 自分で相手方の自賠責保険会社へ申請する
- 自賠責保険会社が書類を確認の上、損害保険料率算出機構に送付
- 損害保険料率算出機構で調査の上、認定が行われる
- 認定結果が申請者へ通知される
- 等級に応じた保険金の支払いを受ける
被害者請求の場合、保険会社ではなく自分で必要書類を全て揃えて相手方の自賠責保険会社へ直接提出する必要があります。(送付先は任意保険会社ではなく自賠責保険会社である点に注意が必要です。)
被害者請求の必要書類
一般的に、被害者請求に必要な書類は次の通りです。
- 自賠責保険金請求書
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 後遺障害診断書
- 診断書(月ごとに発行されるもの)
- 診療報酬明細書( 同上 )
- レントゲンやMRI、CTなどの画像
- 通院交通費明細書
- 休業損害証明書
- 印鑑証明書
適正な後遺障害等級を獲得するには被害者請求で申請を
大きな手間のかからない事前認定ですが、必要書類や資料の収集を相手方任意保険会社任せとなるため、事故状況や症状に関する説明もすべて相手方任意保険会社任せにすることになり、実際に被害者が抱えている症状が正確に伝わらない恐れがあります。
被害者請求は事前認定に比べ被害者側の手間が多くかかりますが、自ら資料・証拠を収集し提出できる分、被害者が抱える障害を正確に伝えることができます。また、弁護士のアドバイスを受けることで、認定獲得に重要なポイントを押さえた提出資料を準備することも可能です。
こうした理由から、実際の症状に合った適正な後遺障害等級を獲得するには、被害者請求での申請の方が優位と言えます。
後遺障害等級認定の申請から認定を受けるまでの期間は平均1~2ヵ月
後遺障害認定を申請しても、すぐに認定結果が出るわけではありません。認定を受けるまでの期間は平均して1~2ヵ月です。
しかし、認定にかかる期間は個々の怪我の状態などによって異なります。例えば、明らかに後遺障害認定が非該当と判断されるほど軽い場合は短期間で調査が終了することが多いと言われています。逆に後遺障害に認定されるかどうか判断が難しいケースでは、認定までの期間が長くなる可能性があります。
後遺障害に認定されない場合の対処法
後遺障害等級の認定が認められず非該当となった場合、もちろん後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を受け取ることはできません。
次に、後遺障害認定において非該当となってしまい納得できない場合の対処法について解説していきます。
異議申し立てを行う
後遺障害に認定されず非該当となった場合、加害者側の任意保険会社や自賠責保険会社へ異議申し立てを行うことができます。異議申し立てを行う場合は、検査結果や画像など認定基準をクリアするために医学的に証明していくことが必要です。
異議申し立てから結果が出るまでに約2~3ヶ月またはそれ以上の期間がかかります。
自賠責保険・共済紛争処理機構へ
異議申し立てを行っても認定結果が変わらない、または結果に納得いかない場合は、自賠責保険にまつわる紛争解決を目的とした第三者機関である自賠責保険・共済紛争処理機構に審査を申請することもできます。弁護士や医師、学識経験者などからなる紛争処理委員会が、保険会社の支払いをめぐる被害者と保険会社の争いを解決する方法です。
訴訟を提起する
異議申し立ての結果に納得いかない場合、最終的には訴訟で争うこともあります。訴訟で争う場合であっても、異議申し立ての時と同様に医師の診断書などの資料が必要になります。そのような医学的な資料をもとにして後遺障害の等級認定について争っていきます。
後遺障害3級の認定を受けることによるデメリットは?
後遺障害等級認定を受けること自体にデメリットはありませんが、等級認定を受けるには症状固定をする必要があり、これに伴って、治療費や休業損害の打ち切りが問題となります。
事故後も入院や通院が続いている場合や、障害の内容から一定の介護が必要になった場合、治療費や休業損害が打ち切られると、後遺障害の補償や介護費の支払を受けるまでの間、多額の自己負担が発生してしまう可能性があります。
そこで、このような場合には、症状固定前の段階で、症状固定後すぐに自賠責保険金(1級の場合は最高で2219万円が支給されます)を請求できるよう準備をしておく、障害者総合支援法や介護保険の利用の準備をしておくなど症状固定前の準備が肝心になります。このような場合には、できる限り早い段階で、後遺障害等級認定に精通した弁護士に無料相談することをお勧めします。
後遺障害等級第3級の認定基準
後遺障害等級第3級の認定基準は、以下のいずれかに該当する場合です。
- 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
- 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
- 両手の手指の全部を失つたもの
一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
失明
- 眼球の摘出
- 明暗を全く識別またはかろうじて識別できる程度
視力
- 眼鏡やコンタクトレンズによる矯正視力
咀嚼又は言語の機能を廃したもの
咀嚼の機能を廃したもの
咀嚼とは、食物を口の中で歯によってかみ砕くことで、流動食以外は摂取できない状態を指します。流動食としては例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 具なしのスープ
- お粥の上澄み液
- ジュース
言語の機能を廃したもの
「言語の機能を廃したもの」というのは、4種の語音(口唇音・歯舌音・口蓋音・喉頭音)のうち3種以上の発音が不能で、言語のみを用いて意思を疎通することができない状態を指します。
口唇音 | ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ |
---|---|
歯舌音 | な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ |
口蓋音 | か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん |
喉頭音 | は行音 |
「ま行」、「な行」、「か行」の音を発声することができない場合、4種類の語音のうち3種以上の発生が不能となるため、言語の機能を廃したものに該当します。
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
脳や脊髄損傷などによって、認知、記憶、思考、判断、言語などの能力が失われる状態です。また、身体の麻痺によって食事、入浴、排便、着替えなどの身の回りのことは自分で出来ますが、労働することができない状態のことをさします。
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
呼吸器、循環器、消化器、泌尿器などの障害による影響で食事、入浴、排便、着替えなどの身の回りのことは自分でできますが、労働することができない状態のことをさします。
両手の手指の全部を失つたもの
両手の全ての指について、第2関節から手の甲までの間で切断してしまった状態です。親指については第1関節から手の甲まで失った状態のことです。
後遺障害3級の認定を獲得するには後遺障害に強い弁護士へ相談を
後遺障害3級に対する一般的な補償の基準は以上のとおりです。
また、一般的に後遺障害の等級認定が認められる確率は、すべての等級を含んだ値で約5%程度と言われています。その中でも、後遺障害3級の認定を受けた人は全体の0.54%のみ。(後遺障害等級別認定数<2018年度> 損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」より)もともと認定を受けづらい後遺障害等級認定の中でも、後遺障害3級の獲得は、かなりの狭き門と言えます。
重篤な被害を巡り、弁護士基準(裁判所基準)で後遺障害3級の補償を受け取るには、交通事故被害に強い弁護士への無料相談が不可欠です。遠慮なくリンクスの無料相談をご利用ください。
後遺障害3級の主な解決実績
50代会社員(15%の過失がなければ賠償金8235万)
【高次脳等3級】事故後復職会社員の逸失利益0とする保険会社に、15%の過失相殺後の賠償金として7000万円を認めさせた事例【逸失利益】