人身傷害保険の死亡保険金の支払い例|3000万で足りない場合の知恵袋
を詳細に解説
人身傷害保険の死亡保険金は、被保険者が交通事故で死亡した場合に発生した治療費、葬儀費用、死亡慰謝料、死亡逸失利益などの損害の補償であり、契約の限度額の範囲内で過失割合に関わらず受け取ることができます。
もちろん、加害者の自賠責保険や対人賠償保険(任意保険)にも損害賠償金を請求することができますが、請求の順序や方法によって、受け取ることができる金額が変わることがあります。
このページでは、法律事務所リンクスの交通事故に強い弁護士石橋勇輝が、自賠責保険、対人賠償保険、人身傷害保険における死亡保険金の違い、死亡保険金の請求の順番や方法を間違って損をするパターンについて解説した上で、死亡保険金を正しい方法で請求して十分な補償を受けた解決事例として、「当初被害者(80代)の過失が8割とされていた死亡事故において、防犯カメラから科学的な速度鑑定を行い、訴訟と人身傷害保険を戦略的に活用することで最終的に計5000万円を超える補償を実現した解決事例」を詳しく解説します。
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自賠責保険、対人賠償保険、人身傷害保険における死亡保険金の違い
死亡事故が発生した際、遺族が金銭的な補償を受けるための請求先は、大きく分けて以下の3つがあります。
- 自賠責保険
- 対人賠償保険(加害者の任意保険)
- 人身傷害保険(被害者自身の保険)
そこで、まずは各保険の概要を解説します。
1 自賠責保険
自賠責保険の補償内容
自賠責保険は、自動車や二輪車などを運転する場合、必ず加入しなければならない強制保険です。これは、交通事故の被害者が最低限の補償を受けられるよう、法律で定められています。
補償対象は、人身に関する補償のみで、物的損害は補償の対象外です。また、「最低限の補償」とされているように、損害ごとに限度額が定められています。ただ、大きな怪我をした場合や死亡事故等の場合は、限度額を超える損害が発生することがあるため、その場合は加害者の「任意保険(対人賠償保険)」に対して損害を請求していくことになります。
区分 | 補償内容の例 | 限度額(1名につき) |
傷害(ケガ) | 治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料など | 120万円 |
後遺障害 | 障害の程度(1級〜14級)に応じた損害 | 75万円 〜 4,000万円 |
死亡 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料など | 3,000万円 |
知っておくべき自賠責保険の「重過失減額」
交通事故の場合、加害者には加害者の過失割合分しか損害賠償請求することができませんので、例えば、事故状況から被害者の過失が30%認められる場合、相手方には損害額×70%(加害者の過失分)しか請求できません。
しかし、自賠責保険は被害者保護のための保険であるため、自賠責保険への請求では、被害者に過失があってもその過失が70%未満であれば減額されません。そして、過失が70パーセントを超えると、以下のように段階的に保険金が減らされます。
この制度を「重過失減額」と呼びます。
被害者の過失 | 減額割合 | |
後遺障害又は死亡に係るもの | 傷害に係るもの | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 | |
参照:日本損害保険協会:自賠責保険では、被害者に過失があっても、損害賠償額は過失相殺の適用がないと聞きましたが、本当ですか。
後で説明する事案のように当初「過失8割」とされたケースでは、自賠責保険にそのまま請求すると死亡保険金3000万円が30パーセント減額され、2100万円になってしまうおそれがありました。そのため、加害者の過失が大きかったことを証明し、被害者の過失を70パーセント未満に抑えることが満額の3000万円を獲得するために必要となるのです。
具体的にどのような方策を採ったのかは、後でする事案の解説の際に詳しく述べます。
2 対人賠償保険(加害者側の任意保険)
自賠責保険では怪我の賠償額に限度額があるため、自賠責保険では足りない賠償金をカバーするのが任意保険です。任意保険(自動車保険)には、主に怪我に対する賠償を行う対人賠償保険と、車等の物の損害に対する賠償を行う対物賠償保険の2つがセットになっています。
強制加入の保険ではないため「任意保険」と言われていますが、多くの運転者はこの対人賠償保険に加入しており、かつ、その賠償額の限度額も無制限にしていることが多いと言われています(参照:国土交通省:自動車保険・共済(任意保険・共済))。
対人賠償保険の死亡事故の賠償金は、主に以下の3つの柱で構成されます。
- 葬儀費用:裁判上の基準では、原則として150万円程度が認められます。
- 死亡慰謝料:亡くなった本人の苦痛と、遺族の精神的苦痛に対する補償です。被害者が一家の支柱であった場合は2800万円前後が裁判所の基準となります。
- 死亡逸失利益:生きていれば将来得られたはずの収入です。年収、就労可能年数、生活費控除率を組み合わせて算出します。
3 人身傷害保険(被害者自身の保険)
これまで解説してきた自賠責保険や対人賠償保険(任意保険)は、あくまで加害者が用意している保険でした。
一方で「人身傷害保険」とは、被害者自身が自分の車につけている保険になります。典型的な使用場面としては、相手方のいない自損事故や、相手方がいても責任を認めない、自賠責保険や任意保険に入っておらず迅速な補償が受けられないような場合に使用することになります。
人身傷害保険の特徴としては、自身が単独で起こした自損事故の場合等でも使えるように、自身の過失の有無やその程度に関係なく保険金が支払われるという点です。
4 自賠責保険、対人賠償保険、人身傷害保険の支払基準と特徴
自賠責保険、対人賠償保険、人身傷害保険の各支払の基準や特徴は以下のとおりです。
下の表のとおり、支払基準として一番高いものは「対人賠償保険」となりますが、当然のことながら加害者の過失分しか請求できません。一方で、自賠責保険は支払基準は低いものの、重過失減額という仕組みにより被害者の過失が70%以上ない場合は、被害者の過失分を考慮しない、すなわち自賠責基準に則って計算された金額の100%分が支払われます。また、人身傷害保険も支払基準は低いものの、被害者の過失分は考慮されずに支払われる点に特徴があります(※保険内容によっては、一部例外的な決まりがあることもあります)。
区分 | 補償の基準 | 被害者の過失との関係 |
自賠責保険 | 「自賠責基準」という低い基準 | 「重過失減額」の考え方がある |
対人賠償保険 | 「裁判基準(弁護士基準)」という高い基準 | 過失割合のとおりに支払額が決まる(=過失相殺される) |
人身傷害保険 | 各人身傷害保険の約款に記載されている基準となるが、自賠責基準に近いことが多い | 過失の考慮はない |
死亡保険金の請求の順番や方法を間違って損をするパターン
ここで最も注意しなければならないのが、死亡保険金をどの順序で、どのような方法で請求するかという点です。
特に被害者の過失が大きい場合には、請求の順番を間違えるだけで、最終的に受け取れる金額が1000万円以上も少なくなってしまうおそれがあります。
この分野については詳しい弁護士が少ないため、交通事故の保険実務に詳しい弁護士に依頼をする必要がありますので、ご注意ください。
典型的な死亡保険金の請求の順番や方法を間違って損をするパターンをご紹介します。
死亡保険金で損するパターン①対人賠償保険と示談→人身傷害保険金を請求
次の事例で考えてみます。
死亡事故による損害額:弁護士基準で5000万円、人身傷害保険の基準で4000万円
被害者の過失割合:2割
対人賠償保険から5000万円-1000万円(被害者の過失2割分)=4000万円の支払を受けた後で人身傷害保険金を請求した場合
人身傷害保険から支払われる額は、保険契約の約款で決まっており、人身傷害保険の基準は弁護士基準とは異なりますので、この事例のように弁護士基準では5000万円でも、人身傷害基準では4000万円ということはよくあります。なお、人身傷害保険の基準で損害を見積もれば4000万円となる場合でも、保険金の支払限度額が3000万円である場合には、人身傷害保険に請求しても3000万円しか支払われません。
さて、この事例で、対人賠償保険とら5000万円-1000万円(被害者の過失2割分)=4000万円で示談した後で、人身傷害保険金を請求した場合、保険契約の約款の決まりで、人身傷害保険金(4000万円)から対人賠償保険金から支払われる額(4000万円)が差し引かれてしまう結果、ご遺族が受け取れる人身傷害保険金は0円になってしまいます。
しかし、この請求の仕方では、受け取れるはずの1000万円を受け取れないという損をしているのです。
この場合、対人賠償保険と示談するのではなく、加害者を相手に裁判を起こした場合、保険契約の約款の決まりで、人身傷害基準(4000万円)ではなく弁護士基準(5000万円)から対人賠償保険金から支払われる額(4000万円)を差し引けばよいこととなるので、ご遺族は人身傷害保険から1000万円を受け取ることができ、合計5000万円を回収することが可能となります。
したがって、このような場合、対人賠償保険との間で示談はせずに、加害者に裁判を起こすのが得ということになります。
死亡保険金で損するパターン②自賠責保険を請求→人身傷害保険金を請求
死亡事故による損害額:弁護士基準で5000万円、人身傷害保険の基準で4000万円
被害者の過失割合:4割
自賠責保険金3000万円の支払を受けた後で、人身傷害保険金を請求した場合
この場合、加害者に請求できるのは、5000万円-2000万円(被害者の過失4割分)=3000万円なので、自賠責保険金で3000万円を受け取っても同じだと考えて、自賠責保険金を請求して、人身傷害保険金を請求しようというお気持ちはよく分かります。
こちらの場合でも、保険契約の約款の決まりで、人身傷害保険金(4000万円)から自賠責保険金(3000万円)が差し引かれてしまう結果、ご遺族が受け取れる人身傷害保険金は1000万円になりますので、自賠責保険金3000万円+人身傷害保険金1000万円=4000万円を回収できることになります。
しかし、この請求の仕方では、受け取れるはずの1000万円を受け取れないという損をしているのです。
仮に、自賠責保険金3000万円を先に請求してしまったとしても、人身傷害保険金の請求はせずに、加害者に裁判を起こせば、加害者からは損害賠償金を受け取ることはできませんが、先ほども説明した保険契約の約款の決まりで、人身傷害基準(4000万円)ではなく弁護士基準(5000万円)から自賠責保険金から支払われた額(3000万円)を差し引けばよいこととなるので、ご遺族は人身傷害保険から2000万円を受け取ることができ、合計5000万円を回収することが可能となるからです。
したがって、このような場合は、人身傷害保険金の請求をする前に、加害者に裁判を起こすのが得ということになるのです。
死亡保険金で損をするパターン③人身傷害保険金を請求→自賠責保険金を請求
死亡事故による損害額:弁護士基準で5000万円、人身傷害保険の基準で4000万円
被害者の過失割合:6割という事例
人身傷害保険金の限度額3000万円の支払を受けた後で、自賠責保険金を請求した場合
この場合、人身傷害保険の保険会社は被害者に人身傷害保険3000万円を支払った後、自賠責保険から被害者が受け取れたはずの3000万円を回収してしまいます。
もっとも、被害者は、加害者に裁判を起こせば、対人賠償保険から5000万円-3000万円(被害者の過失6割分)=2000万円を支払ってもらうことができるので、合計5000万円を回収することができ、致命的なことにはなりません。
ところが、被害者の過失割合が8割という事例では、加害者に裁判を起こしても、対人賠償保険から5000万円-4000万円(被害者の過失8割分)=1000万円しか支払ってもらえないので、合計4000万円しか回収できないことになってしまいまい、受け取れるはずの1000万円を受け取れないという損をしてしまいます。
この場合、先に自賠責保険金を請求すると、自賠責は重過失減額をして3000万円の3割減の2100万円を支払います。その後に、人身傷害保険金の請求はせずに、加害者に裁判を起こせば、加害者からは損害賠償金を受け取ることはできませんが、先ほども説明した保険契約の約款の決まりで、人身傷害基準(4000万円)ではなく弁護士基準(5000万円)から自賠責保険金から支払われた額(2100万円)を差し引けばよいこととなるので、ご遺族は人身傷害保険から2900万円を受け取ることができ、合計5000万円を回収することが可能となるからです。
以下に紹介する事案では、被害者の過失が8割と言われていましたが、上記のような保険の仕組みを最大限に考慮して、
①まず自賠責保険における重過失減額を回避するための意見書を作成し、自賠責保険に被害者の過失を7割未満と認めさせ、重過失減額なしで治療費等約55万円、死亡保険金3000万円の約3055万円の回収に成功
②その後、人身傷害保険からの受領額を最大化するため、加害者に対して損害賠償請求の訴訟の提起
③訴訟では、自賠責保険からの受領額(3120万円)から加害者への請求は棄却となったものの、その後に人身傷害保険への請求により約1988万円を受領
④結果的に、被害者の裁判基準(弁護士基準)の全損害額となる5044万円(自賠責保険:3055万円+人身傷害保険:1988万円)の獲得に成功しましたので、詳しくご説明します。
死亡事故の被害者の過失が8割でも人身傷害保険を利用して合計5044万円を獲得した事例
事故の内容:路外からの進入と猛スピードの大型バイク
本件の被害者は、事故当時、年金を受給しつつ自営業を営んでいた80歳の男性です。原動機付自転車を運転してガソリンスタンドから幹線道路へ進入しようとした際、幹線道路を大幅な速度違反で走行してきた加害車の大型自動二輪車と衝突しました。
被害者は事故の衝撃で投げ出され、外傷性くも膜下出血や多くの骨折を負い、高齢の身体にはあまりに過酷な重傷を負っていました。その後、被害者の方は一度も意識が回復することなく、事故から約1か月後に亡くなられてしまいました。
警察の初動捜査や実況見分調書では、被害者が道路外から進入した際の不注意が主因とされ、基本過失割合に基づき被害者側に極めて不利な「被害者:加害者=80:20」という見通しが立てられていました。また、死亡原因についても、事故から1か月後に亡くなられたため、死亡診断書上、事故が死亡の直接の原因とはされていませんでした。
相談のきっかけ:納得できない過失割合と「病死」の主張
ご遺族が当事務所に相談に来られた際、深い悲しみとともに、加害者側への強い憤りを感じておられました。
被害者の遺族の方々は、加害者に大幅な速度違反が認められるにもかかわらず、被害者に多くの過失割合があるとされていること、何より保険会社同士で、淡々と話しが進められていくことに疑問を抱いていました。さらに追い打ちをかけたのが、死亡原因の問題です。死亡診断書には直接の死因として「慢性心不全の急性増悪」の記載があったため、直接の死因が交通事故ではないとされていたことも気がかりでした。
ご遺族の方々は、「父はあの事故でボロボロになって死んだのに、病気扱いにされるのは耐えられない」と、真実を明らかにするために当事務所を頼られました。
リンクスの弁護士のアドバイス:緻密な立証戦略
相談を受けたリンクスの弁護士は、記録と証拠を徹底的に精査し、補償を最大化するための3つの戦略を提示しました。
①科学的な「速度鑑定」で過失割合を覆す
単に「加害者の二輪車のスピードが出ていた」と主張するだけでは裁判には勝てません。そこで、加害者の速度違反を検証するには、ガソリンスタンドの防犯カメラ映像のデータを入手する必要があります。
そのような証拠を入手した上で、防犯カメラ映像をフレーム単位で解析し、加害車両が特定の2地点間を何秒で通過したかを精密に測定し、これにより加害者の大幅な速度違反(重過失)を数値で証明し、過失割合を大きく修正することを目指しました。
②医療照会による「事故と死亡の因果関係」の証明
被害者には持病がありました。しかし、事故による多発骨折や出血、そして気管切開などの侵襲的な治療がなければ、このタイミングで死に至ることはなかったはずです。弁護士は、主治医に対して面談又は医学的な質問状を送り、「事故による身体的ダメージが心機能に致命的な負荷を与えた」という回答を取り付ける方針を立てました。
③「人身傷害保険」を裁判基準で請求する
これが最も重要な点です。本件のように「道路外からの進入」という事故の場合、類型的には道路外から進入した被害者の過失が80%となってしまいます。そのため、このような事案では、自賠責保険や加害者からの賠償金(対人賠償保険)、人身傷害保険といった各請求先に対して適切な順序で請求しないと十分な補償が得られません。
そこで、請求の順序として、「自賠責保険への請求(被害者請求)」→「裁判による総損害額の確定」→「自分の人身傷害保険への請求」という流れにより、裁判を行うことで人身傷害保険に「裁判基準」での損害額を確定させ、人身傷害保険からの受領額を増額させる戦略をアドバイスしました。
リンクスの弁護士の活躍ポイント
弁護士は、被害者の遺族が適切な損害、すなわち裁判基準の5044万円を獲得できるよう、自賠責保険への請求及び裁判において以下のような活動を行いました。
①執念で入手した防犯カメラ映像から弾き出した加害車両の大幅な速度違反
当初、ガソリンスタンドに防犯カメラ映像のデータの有無を確認したところ、既に検察にデータを提出しているため、データ自体は手元にないと言われました。そこで、検察庁から資料を取り寄せようとしましたが、取り寄せた資料には防犯カメラ映像の「静止画」しかなく、追加で防犯カメラ映像のデータを提出するよう要望しましたが、検察庁からは提出されませんでした。しかし、静止画のままでは正確な速度鑑定が困難です。
そこで、「何とか防犯カメラ映像のデータを入手できないか」との思いで、ガソリンスタンドの従業員の方に再度話を伺ったところ、とあるガソリンスタンドの従業員が、携帯電話で防犯カメラの映像を動画で撮影し保存していることが分かりました。そこで、ガソリンスタンドに直接赴いて、当時の防犯カメラ映像を入手することができました。そして、専門業者との協力も得ながら、速度を計算した結果、加害車は制限速度時速50kmの道路を時速100km以上の速度で走行していることが判明しました。さらに、加害車両(二輪車)のギアが5速に入っていた実況見分の結果と、バイクのメーカーから取り寄せた「5速での走行可能速度範囲」の資料を組み合わせ、この速度が事故時のバイクの状況からも裏付けられることを突き止めました。
自賠責保険への請求時に上記証拠や主張をまとめた意見書を提出した結果、自賠責保険は「重過失減額」を適用しない、すなわち被害者の過失は70%未満であると認定し、自賠責保険から限度額(計3120万円)を受領することができました。
②医師の回答を武器に、事故と死亡との因果関係が認められる
被害者の死亡診断書では、交通事故から約1か月後の死亡ということもあってか、交通事故が直接の死因とはなっていませんでした。そこで、病院の主治医に対して詳細な医療照会を実施した結果、医師から「事故と死亡との因果関係はある」との回答を得ることができました。このような書面を自賠責保険に提出した結果、自賠責保険においても、事故と死亡の因果関係が認められることとなりました。
③人身傷害保険の「二重引き」の主張を阻止し1900万円の獲得
本件で一番重要な点です。人身傷害保険の支払いについて、人身傷害保険の保険会社の担当者と事前に打合せを行いました。その打合せでは、人身傷害保険を最大限に活用するため、裁判を行うこと等も伝えていました。しかし、担当者からは、当初「自賠責保険で既に3000万円を受け取っているため、社内規定で計算した結果、裁判をしたとしてもこれ以上支払うものはありません」と主張されました。
これに対し、弁護士は、担当者の考え方は約款を正しく理解しておらず誤っていること、裁判で認定された「裁判基準(訴訟基準)」の損害額をベースに計算し直すよう強く要求しました。粘り強く交渉し、当該担当者の上司にも話をしたところ、当該上司は当方の考えが正しいことを認めてくれました。その結果、保険会社は自社の計算誤りを認め、最終的に人身傷害保険金として約1988万円の支払いを行うことに同意しました。
この経緯からも、上記処理方法は、保険会社の担当者でも理解を誤るような難しい処理であるといえるでしょう。
解決結果:自賠責保険と保険特約の合算で総額5044万円を獲得
裁判所における和解案では、被害者の過失は、道路外からの進入車で通常想定されている80%の過失より15%下がった65%となりました。
その結果、加害者に請求できる金額は、被害者の総損害5044万円×加害者の過失35%=1765万円となるところ、被害者の遺族は既に自賠責保険から3055万円を受け取っているため、加害者への請求は棄却、すなわち加害者から支払われるものはないとの結論になりました。
ただ、この結果については、事前に依頼者にも「訴訟を起こしますが、加害者への請求は棄却となります」と説明しており想定内です。訴訟をした目的は、人身傷害保険金の保険会社に、裁判所が認定した5044万円から自賠責保険支払額を控除した残額である1988万円相当を支払ってもらう点にあるからです。
【実際の受領金額の内訳】
- 自賠責保険金:3055万円
- 人身傷害保険金:1988万円
- 合計:5044万円
過失割合は最終的に「被害者 65:加害者 35」となりましたが、被害者自身の保険(人身傷害保険)を「裁判基準」により算定させたことで、過失相殺による減額分を実質的に全て穴埋めし、ご遺族は総額で5000万円を超える適正な補償を手にすることができたのです。
人身傷害保険の死亡事故金の請求に関するFAQ
Q.人身傷害保険に対する死亡保険金の請求は、弁護士をつけず被害者自身で行うことはできますか?
A.被害者自分で行うこと自体は不可能ではありません。
しかし、自賠責保険、対人賠償保険(任意保険)、人身傷害保険といった各保険が使える場合に、どこにどのように順序で請求していくのかの検討、過失割合の内容及びその精査、何より上記事案で紹介したように訴訟を提起する必要があります。訴訟を提起すると、任意保険会社も弁護士をつけて対応してくることになるため、訴訟戦略や主張を誤ると、裁判基準により総損害を高くしようとした結果、任意保険会社の弁護士の反論により、人身傷害保険が算定していた損害よりも逆に低く認定されてしまうというリスクもあります。
また、上記戦略は、交通事故のプロであるはずの保険会社の担当者でも理解できていないことがありますから、弁護士、それも交通事故の被害者側で多くの事案を取り扱っている弁護士に依頼するのが賢明と思われます。
Q.病院で「病死」と言われても、事故の因果関係が認められるのですか?
A.医師が書く死亡診断書と、法律上の因果関係は必ずしも一致しません。本件のように、弁護士が医学的知識を背景に医師と面談し、「事故がなければこの時期に心不全が悪化することはなかった」という法的な意見を引き出すことで、因果関係を認めさせることは可能です。
人身傷害保険の死亡保険金請求のまとめ
交通事故で高齢のご家族を亡くされたとき、相手方の保険会社からの「被害者が悪い」「病気で死んだ」という言葉は、ご遺族の心を深く傷つけます。しかし、本事例が証明したように、防犯カメラ映像の1コマ1コマを分析する姿勢、病院の主治医と連携した医学的アプローチ、そして複雑な保険約款を使いこなす専門知識があれば、適正な補償を勝ち取ることができます。
特に「請求の順序」と「裁判基準の適用」は、素人では太刀打ちできない極めて専門的な領域です。法律事務所リンクスでは、ご遺族の無念に寄り添い、緻密な調査と粘り強い交渉で「本当の解決」をサポートいたします。加害者側の提示額や過失割合に少しでも疑問を感じたら、手遅れになる前にぜひ一度ご相談ください。
このコンテンツの監修
弁護士法人法律事務所リンクス
代表弁護士 藤川 真之介
交通事故の被害者の救済に取り組む。特に後遺障害等級の獲得に注力し、担当した裁判例が交通事故専門誌「自保ジャーナル」2048号等多数掲載。京都大学法学部卒業。2007年弁護士登録(日弁連登録番号35346)。京都弁護士会所属。2016年に交通事故被害者のための法律事務所として弁護士法人法律事務所リンクス(日弁連届出番号1030)創設。





