骨盤輪骨折とは?分類ごとの治療やリハビリは?歩けるまで全治何ヶ月?
骨盤輪骨折後の股関節の可動域制限で後遺障害等級併合11級を獲得して約630万円を獲得した事例を詳細に解説
骨盤輪骨折(こつばんりんこっせつ)とは、骨盤を構成するドーナツ状の構造(骨盤輪)の複数箇所が、交通事故や労災事故などの強い外力で破綻して不安定になる骨折です。
骨盤内の臓器や血管損傷を合併しやすい危険な骨折で、激しい痛み(疼痛)、歩行困難、大量出血(出血性ショック)を伴うことがあり、早期に骨盤を安定させる必要があります。
この記事では、法律事務所リンクスで骨盤輪骨折という重症(重傷)を負った被害者の事故を担当した弁護士谷優貴が、どのように資料を集め、後遺障害等級11級と獲得し、約630万円の賠償金を獲得したかの実例を交えながら、必要な手続きや資料について具体的に説明します。
事故に遭ってからすぐに弁護士に相談することで、獲得できる賠償金の額が大きく変わることもありますので、交通事故で骨盤輪を骨折された方は、遠慮せずすぐにご連絡ください。
電話での簡単な依頼で解決される方も多数!お気軽にご相談ください!
- お電話で
無料相談【全国対応】 - 0120-917-740
受付時間 10:00~18:00(土日祝除く)
骨盤輪骨折とはどのような怪我か
骨盤は、左右の寛骨(腸骨、坐骨、恥骨)と、背骨の土台となる仙骨・尾骨が組み合わさって構成されています。これらがドーナツのような輪(リング)を形成しており、これを「骨盤輪」と呼びます。
骨盤輪は、内臓(膀胱、直腸、女性であれば子宮など)を保護すると同時に、上半身の重さを支え、その荷重を股関節を通じて下肢へと伝達する役割を担っています。非常に強固な靭帯で結合されており、通常の外力では容易に破壊されません。
骨盤輪骨折の定義
骨盤輪骨折とは、このリング構造の連続性が断たれた状態を指します。 リングの一部が一箇所だけ折れた場合は、骨盤の安定性は比較的保たれますが、下のイラストのように二箇所以上が折れたり、靭帯が断裂して仙腸関節が外れたりすると、骨盤は不安定になり、体重を支える機能が失われます。
寛骨臼骨折との違い
よく似た名称に「寛骨臼骨折(かんこつきゅうこっせつ)」があります。これは骨盤の中でも、大腿骨の頭を受け入れる「お椀」の部分(股関節の屋根にあたる部分)が折れる怪我です。骨盤輪骨折は骨盤の「輪」全体の損傷を指すのに対し、寛骨臼骨折は「関節面」の損傷を指します。両者が合併することもあります。大腿骨の頭を骨折した場合で人工骨頭を入れたときも後遺症(後遺障害)が認定されることがあります。人工骨頭を入れたときの後遺症(後遺障害)については、「人工骨頭置換術・人工股関節にした場合の後遺障害等級は?労災なら?」をご参照ください。
交通事故で骨折した被害者のための無料電話相談実施中
法律事務所リンクスの無料電話相談では、交通事故に強い弁護士が、交通事故で骨折をしてお困りの被害者のための電話での無料相談を実施しています。
交通事故で骨折をした場合、治療に集中して早く仕事や日常に戻りたいにもかかわらず、警察や保険会社の対応に追われてしまい、大変です。
弁護士に依頼すれば、どのように対応すればよいかのアドバイスを受けたり、窓口を任せたりすることができますので、治療や仕事復帰に集中することが可能です。
交通事故で骨折をしてお困りの被害者の方は、0120-917-740にお電話を頂くか、LINEで交通事故の無料相談をお申し込みください。
骨折した場合の保険会社への正しい対処法について約6分の動画で確認したい方はコチラ
骨盤輪骨折の症状
骨盤輪骨折の症状は、骨折の程度によって異なりますが、主に以下のような症状が現れます。
疼痛と歩行困難
骨盤輪骨折の症状として最も多くみられるのが、骨盤周辺に生じる強い疼痛(痛み)です。
骨盤は体幹と下肢をつなぎ、体重を支える重要な役割を担っているため、骨折によって骨盤輪の安定性が損なわれると、わずかな動作でも激しい痛みが生じるようになります。
特に、寝返りを打つ、起き上がる立ち上がろうとするといった日常的な動作の際に、骨盤部に鋭い痛みや深部痛が走ることが多く、安静時と動作時で痛みの程度に大きな差が出るのも特徴です。
骨盤輪骨折では、骨盤が体重を十分に支えられなくなるため、自力で立つことや歩行を行うことが困難になるケースが少なくありません。その結果、受傷直後から「立てない」「歩けない」「体重をかけられない」といった症状を訴えることが多くみられます。もっとも、すべての骨盤輪骨折で歩行不能となるわけではありません。
骨折のズレが小さく、骨盤輪の安定性が保たれている安定型骨盤輪骨折の場合には、強い痛みを感じながらも、何とか歩行が可能なケースも存在します。
この点が、単なる打撲、腰痛、筋肉痛などと誤認されやすい原因となることがあり、特に高齢者では、「歩けているから骨折ではない」と判断され、受診が遅れるケースも少なくありません。
しかし、歩行可能であっても、骨盤輪骨折が存在する場合には、無理に動くことで骨折部の不安定性が増し、痛みの悪化や骨折の進行を招くおそれがあります。
そのため、骨盤周囲の強い痛みや歩行時痛が続く場合には、早期に医療機関を受診し、画像検査(X線・CTなど)を受けることが重要です。
出血性ショック
骨盤輪骨折において、最も重篤で生命に直結する合併症の一つが「出血性ショック」です。
骨盤内部には、総腸骨動脈・総腸骨静脈をはじめとする太い血管が走行しており、さらに骨盤壁周囲には静脈叢と呼ばれる血管の網目状構造が豊富に存在しています。
このような解剖学的特徴から、骨盤輪骨折によって骨が大きく転位したり、骨折端が血管を損傷した場合、極めて大量の出血が短時間で生じる危険性があります。
特に問題となるのが、後腹膜腔と呼ばれるスペースへの出血です。
後腹膜腔は体表から確認しにくく、外から見て明らかな出血がなくても、体内では大量出血が進行しているという事態が起こり得ます。そのため、出血に気づいた時には、すでに全身状態が急速に悪化しているケースも少なくありません。
大量出血が進行すると、血圧の著しい低下、顔面蒼白、冷汗、意識レベルの低下、呼吸の速さや脈拍の増加といった症状を呈する出血性ショックに陥ります。
出血性ショックは、適切な処置が遅れた場合、短時間で命に関わる極めて危険な状態です。
骨盤輪骨折による出血の厄介な点は、骨盤内に大量の血液を貯留できてしまう、圧迫止血が困難、動脈損傷だけでなく静脈叢からの持続的出血が多いといった特徴があることです。
そのため、救急医療の現場では、骨盤輪骨折が疑われる場合、画像検査と並行して迅速な循環管理・止血対応が行われます。
具体的には、骨盤固定具(骨盤バインダー)による一時的止血、輸血を含む全身管理、動脈損傷が疑われる場合の血管塞栓術(IVR)などが検討され、救命を最優先とした治療方針が取られます。
このように、骨盤輪骨折は単なる骨折ではなく、大量出血を伴う重症外傷として扱われるべき疾患です。
特に交通事故や高所転落などの高エネルギー外傷では、受傷直後から出血性ショックを合併するリスクが高く、迅速な医療介入が生死を分けることになります。
合併症(臓器損傷・神経損傷)
骨盤輪骨折では、骨そのものの損傷だけでなく、骨盤内に存在する重要な臓器や神経が同時に損傷されるおそれがあります。
骨盤は、消化器・泌尿器・生殖器、さらには下肢へ向かう神経や血管が密集する部位であるため、骨折の程度や骨片の転位によっては、重篤な合併症を引き起こすことがあります。
以下では、骨盤輪骨折に伴って生じやすい代表的な合併症について解説します。
尿路損傷(膀胱・尿道損傷)
骨盤内には膀胱や尿道といった尿路臓器が存在しており、骨盤輪骨折によりこれらが損傷されることがあります。
特に、骨盤前方の骨折や強い圧迫力が加わった場合、膀胱の破裂や尿道の断裂を生じることがあります。
主な症状としては、血尿が出る、尿が出なくなる(尿閉)、排尿時の強い痛みなどが挙げられます。
尿路損傷を見逃した場合、尿が体内に漏れ出すことで感染症や腹膜炎を引き起こす危険性もあり、早期診断と治療が不可欠です。
直腸損傷・腸管損傷
頻度は高くありませんが、骨折によって生じた骨片が、直腸や周囲の腸管を直接損傷するケースもあります。
この場合、腸内容物が体内に漏れ出すことで、重篤な感染症や敗血症を引き起こすリスクがあります。
直腸損傷が疑われる場合には、肛門周囲の出血、腹痛、発熱などの症状がみられることがあり、緊急手術が必要となることもあります。
神経損傷(坐骨神経・大腿神経など)
骨盤周囲には、下肢の運動や感覚を司る重要な神経が走行しています。
骨盤輪骨折によってこれらの神経が、骨折部で直接損傷される、血腫や腫れによって圧迫されるといった状況が生じると、神経損傷を合併することがあります。
代表的には、坐骨神経や大腿神経の障害により、足のしびれ、感覚が鈍くなる、力が入りにくい、歩行障害や麻痺といった運動障害・感覚障害が現れることがあります。神経損傷は、時間の経過とともに回復することもありますが、損傷の程度によっては、後遺症として長期に残る可能性も否定できません。
このように、骨盤輪骨折は単なる骨折にとどまらず、臓器損傷や神経損傷といった多彩な合併症を引き起こす危険性のある重症外傷です。
そのため、受傷直後だけでなく、治療経過や回復期においても、排尿状態・感覚異常・運動機能の変化を慎重に観察することが重要といえます。
骨盤輪骨折の分類
骨盤輪骨折では、骨折の形態や骨盤輪の安定性を評価したうえで治療方針を決定する必要があります。
骨盤は「リング状構造」をしているため、一か所が壊れると他の部位にも影響が及びやすく、単純な骨折と重症外傷とでは治療戦略が大きく異なります。
そのため、臨床現場では骨盤輪の安定性、回転方向・垂直方向のずれの有無、体重支持能力の有無といった観点から分類を行います。
代表的な分類として、Tile分類やAO分類が広く用いられています。
安定型(Type A)
安定型(Type A)は、骨盤輪のリング構造が保たれている状態を指します。
骨折は存在するものの、体重を支える機能が失われておらず、骨盤全体としての安定性が維持されているのが特徴です。
代表的な例としては、恥骨の単独骨折、坐骨の単独骨折、軽度の仙骨骨折などが挙げられます。
このタイプでは、通常、大きな転位(ずれ)が生じにくく、出血量も比較的少ないため、基本的には手術を必要とせず、保存療法が選択されることが多いです。
回転不安定型(Type B)
回転不安定型(Type B)は、骨盤輪が回転方向に不安定となっている状態です。
典型的には、骨盤が左右に開いてしまう「オープンブック型」、内側に押しつぶされるように変形するタイプなどが含まれます。
このタイプでは、垂直方向(縦方向)の安定性はある程度保たれているものの、回転方向の安定性が失われているため、歩行や体重負荷に支障を来す可能性があります。
保存療法のみでは安定性が不十分となることが多く、外固定、内固定といった手術治療が必要となるケースが多いのが特徴です。
完全不安定型(Type C)
完全不安定型(Type C)は、骨盤輪のリング構造が完全に破綻した最重症型です。
回転方向・垂直方向のいずれに対しても不安定で、骨盤があらゆる方向にずれてしまう状態を指します。
このタイプでは、垂直方向の大きな転位、体重支持機能の完全喪失、大量出血や臓器損傷の合併を伴うことが多く、命に関わる重症外傷として扱われます。治療には、強固な内固定手術が不可欠であり、救命措置と並行して段階的な手術計画が立てられます。
骨盤輪骨折の治療法
骨盤輪骨折の治療は、大きく
救急搬送直後の「救命治療」
状態安定後の「機能再建治療」
という二段階で考えられます。
初期治療(救命措置)
不安定な骨盤輪骨折では、大量出血による出血性ショックが最大の問題となります。
そのため、救急現場ではまず止血と循環管理が最優先されます。
簡易外固定
シーツや専用ベルト(サムスリングなど)を用いて骨盤を締め上げ、骨盤内の容積を減らすことで出血を抑える方法です。
TAE(経カテーテル動脈塞栓術)
カテーテルを用いて出血している血管を特定し、塞栓物質で血管を詰めて止血します。
特に動脈性出血が疑われる場合に有効です。
創外固定
骨にピンを刺し、体外でフレームを組んで骨盤を固定します。
止血と安定化を同時に図れる重要な治療法です。
保存療法
骨盤の安定性が保たれている場合(Type Aなど)や、高齢者などで手術リスクが高い場合には保存療法が選択されます。
基本は安静ですが、長期間の臥床は筋力低下、認知機能低下、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)などのリスクを高めるため、可能な限り早期のリハビリ開始が重要とされています。
手術療法
骨盤輪が不安定な場合や、関節面のずれが大きい場合には手術療法が選択されます。
創外固定術
急性期に行われることが多いですが、一定期間、治療として継続使用されることもあります。
内固定術
プレートやスクリュー(ネジ)を用いて、骨盤を直接固定します。
近年では、皮膚切開を最小限に抑えた低侵襲手術(MIPO法など)も普及し、術後回復や合併症リスクの低減が期待されています。
骨盤輪骨折は歩けるまで全治何ヶ月かかるのか
骨盤輪骨折において、患者様ご本人やご家族が最も気にされるのが「いつから歩けるようになるのか」「全治までにどれくらいの期間がかかるのか」という点です。
骨盤は体重を支える重要な部位であるため、骨折の回復には一定の時間を要します。
また、骨折のタイプ(安定型か不安定型か)・手術の有無・年齢・全身状態によって、歩行再開までの期間や回復スピードには大きな個人差があります。
以下では、一般的な経過の目安について解説します。
入院期間と全治の目安
軽症(安定型骨盤輪骨折)の場合
骨盤輪の安定性が保たれている安定型(Type A)では、比較的回復が早く、保存療法を中心に治療が進められます。
入院期間:2週間〜1か月程度
骨癒合までの期間(全治の目安):2〜3か月程度
このタイプでは、受傷直後から痛みの許す範囲で歩行訓練を開始することもあります。
ただし、「歩ける=治った」というわけではなく、無理な動作を続けると痛みが長引いたり、回復が遅れる可能性があるため注意が必要です。
重症(不安定型・手術あり)の場合
骨盤輪が不安定なType B・Type Cなどでは、手術療法が必要となることが多く、回復には長期間を要します。
入院期間:2か月〜4か月程度
全治までの期間:6か月〜1年程度
骨が完全に癒合し、日常生活や仕事・家事に支障がなくなるまでには、半年以上かかるケースも珍しくありません。
特に高齢者や、合併症(出血・臓器損傷・神経障害)を伴う場合は、回復までの期間がさらに延びることがあります。
骨盤輪骨折のリハビリテーションの流れ
骨盤輪骨折の回復において、リハビリテーションは極めて重要です。
医師の指示のもと、骨の癒合状態(仮骨形成)を確認しながら段階的に進めます。
受傷直後〜術後数日(急性期)
この時期は、安静を保ちつつ、ベッド上での体位調整(ポジショニング)、足首の運動や下肢運動による深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)予防を行います。
「動かない時期」でも、動かせる範囲でのリハビリが重要です。
術後1週〜4週(免荷期間)
骨盤に体重をかけない免荷期間です。車椅子への移乗訓練、松葉杖や歩行器を用いた非荷重歩行訓練
ベッド上での筋力トレーニングを行い、筋力低下や体力低下を防ぐことが目的となります。
術後4週〜8週(荷重開始)
レントゲンなどで骨の安定性が確認できれば、体重の3分の1、体重の2分の1と、段階的に患側へ体重をかける「部分荷重」を開始します。この時期は、痛みと相談しながら慎重に進める必要があります。
術後8週〜12週(全荷重)
骨の癒合が進めば、全体重をかけた歩行(全荷重)が許可されることが多いです。杖なし歩行の練習、バランス訓練、段差昇降や方向転換などの応用動作訓練を行い、日常生活への復帰を目指します。
早期歩行の重要性
近年の治療では、可能な限り強固な固定手術を行い、早期に離床・歩行訓練を開始する
という考え方が主流になっています。
長期間の寝たきりは、筋力低下、関節拘縮、認知機能低下、廃用症候群を引き起こしやすく、特に高齢者では回復が著しく遅れる原因となります。
そのため、医師・理学療法士の管理のもと、安全を確保しながらできるだけ早く体を動かすことが、骨盤輪骨折からの回復を左右する重要なポイントとなります。
骨盤輪骨折の後遺症(後遺障害)
適切な治療やリハビリを行っても、骨盤輪骨折では後遺症が残るケースが少なくありません。
交通事故や労災事故の場合、これらの症状は「後遺障害」として等級認定され、将来にわたる損害として賠償の対象になります。
以下では、代表的な後遺症ごとに、想定される後遺障害等級と弁護士が介入した場合に認められやすい慰謝料額の目安を解説します。
股関節の可動域制限・慢性的な痛み
骨盤輪骨折では、骨盤の変形や長期間の安静・固定により、股関節の可動域が制限されることがあります。
また、変形治癒や癒合不全があると、歩行時痛・立ち上がり時痛・長時間歩行の困難といった症状が慢性化することも少なくありません。
可動域が制限された場合に想定される後遺障害等級
8級7号:「1下肢の3大関節の中の1関節の用を廃したもの」
「用を廃したもの」とは、簡単に言うと、全く股関節が動かない状態、あるいは、動いたとしても、ケガをしていない方の股関節の10%以下しか動かないような場合をいいます。
10級11号:1下肢の3大関節の中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」
「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、股関節の可動域が、ケガをしていない側の股関節と比べ1/2以下に制限されているような場合場合をいいます。
12級7号:「1下肢の3大関節の中の1関節の機能に障害を残すもの」
「関節の機能に障害を残すもの」とは、股関節の可動域(動く範囲)が、ケガをしていない側の股関節と比べ3/4以下に制限されているような場合をいいます。
後遺障害慰謝料(弁護士基準の目安)
| 後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
| 8級 | 830万円 |
| 10級 | 550万円 |
| 12級 | 290万円 |
可動域制限については、単に「動かしにくい」という自覚症状があるだけでは足りず、関節角度が医学的にどのように計測・評価されているかが、後遺障害認定の可否を左右する重要なポイントになります。
そのため、股関節の動きに制限を感じている場合には、些細なことと思わず、必ず弁護士にお伝えください。
神経麻痺・しびれ(下肢の神経症状)
神経が障害されることで足のしびれ、感覚鈍麻、筋力低下(足首が上がらない等)といった症状が残ることがあります。
神経が障害されることで想定される後遺障害等級
12級13号:「局部に頑固な神経症状を残すもの」
「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、他覚所見によって客観的に疼痛が存在することを証明できる場合をいいます。つまり、レントゲンやMRIなどで骨や筋肉に異常が残っていることが画像上から確認できることが必要となります。
14級9号:「局部に神経症状を残すものもの」
「局部に神経症状を残すもの」とは、疼痛が存在することが合理的に説明できる場合をいいます。つまり、レントゲンやMRI画像では骨や筋肉に異常は残っていないが、その事故態様、規模、治療経過、症状の推移などを踏まえて、痛みが残っていると説明できることが必要となります。
後遺障害慰謝料(弁護士基準の目安)
| 後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
| 12級 | 290万円 |
| 14級 | 110万円 |
※神経症状はMRI・CT所見と神経学的検査結果の整合性が認定の分かれ目になります。
弁護士が医師と連携し、診断書の記載内容を整えることで、認定の可能性が大きく変わります。
骨盤の変形・脚長差による歩行障害
骨盤輪が左右非対称のまま癒合すると、脚長差が生じ、跛行(びっこ歩行)・長時間歩行困難・座位バランス不良といった障害が残ることがあります。
短縮によって想定される後遺障害等級
8級5号:「一下肢を5センチメートル以上短縮したもの」をいいます。
10級8号:「一下肢を3センチメートル以上短縮したもの」をいいます。
13級8号:「一下肢を1センチメートル以上短縮したもの」をいいます。
後遺障害慰謝料(弁護士基準の目安)
| 後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
| 8級 | 830万円 |
| 10級 | 550万円 |
| 13級 | 180万円 |
弁護士が介入することで慰謝料が増える理由
後遺障害は、症状があるだけでは足りず、「正しく伝える」ことが不可欠です。弁護士が介入すると、医学的所見と自賠責基準を踏まえた診断書の整理、等級認定を見据えた意見書・画像評価を書面で出すこともあります。
任意保険基準ではなく弁護士基準での慰謝料請求が可能になり、後遺障害慰謝料だけで数十万〜数百万円の差が生じることも珍しくありません。
骨盤輪骨折後の股関節の可動域制限で後遺障害等級併合11級を獲得して約630万円を獲得した事例
事故の内容
被害者は、交差点で横断歩道を横断していたところ、右折してきた四輪車に衝突されて骨盤を5箇所骨折する怪我を負いました。
約50日の入院と手術を行いました。全ての治療期間は、約1年でした。
被害者が、ご高齢であったこともあり、ご子息が今後の治療や慰謝料についてどうしたらいいか分からずリンクスの弁護士に依頼されました。
症状固定と後遺障害診断書の作成
被害者自身は、治療を始めて約1年が経過した頃、医師にこれ以上治療を続けても回復の見込みがない旨伝えられたため、治療を終了することとしました。
そこで、リンクスの弁護士は、骨盤輪骨折による可動域制限が残っているかを確認するため、主治医に左右の股関節の屈曲、外転・内転の可動域の測定を依頼しました。(※イラストは立って測定していますが、正確には寝て測定します。)
その結果、両方の股関節の屈曲が、それぞれ本来の可動域に比べて、4分の3以下に制限されていることが分かりましたので、後遺障害診断書に記入してもらいました。
ここで重要なのは、足に可動域制限がある場合、本来であれば怪我をしていない方の足と比べてその可動域の制限の程度を測定しますが、両方の足に可動域の制限がある場合は、参考値といって、あらかじめ定められている基準値と比べることになります。
後遺障害等級認定
リンクスの弁護士は、主治医に作成してもらった後遺障害診断書を基に後遺障害等級認定手続きをとったところ、両足の股関節の可動域制限があることが無事認められ、後遺障害等級12級7号「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」がそれぞれ認められ。併合11級との認定となりました。
慰謝料
依頼者は、ご高齢で独居であったことから逸失利益は認められませんでしたが、後遺障害慰謝料と入通院慰謝料を弁護士の基準で引き直して、合計で約630万円の慰謝料をお渡しすることができました。
骨盤輪骨折のまとめ
骨盤輪骨折は、歩行機能に直結する重大な怪我です。 「全治何ヶ月かかるか」は、骨折のタイプ(安定型か不安定型か)や治療法(手術の有無)によって大きく異なり、2〜3ヶ月で復帰できる場合もあれば、半年以上のリハビリを要する場合もあります。
現在は医療技術の進歩により、適切な手術とリハビリテーションを行えば、多くのケースで歩行機能を取り戻すことが可能です。焦らず、医師や理学療法士と相談しながら、段階的に治療を進めていくことが大切です。事故で骨盤輪骨折を負った場合は、正確な慰謝料を取得するためにも必ず弁護士にご相談ください。
法律事務所リンクスは骨折の後遺障害等級の獲得実績多数
リンクスの弁護士は、3000人以上の交通事故被害者の方から無料相談をお受けし、1500人以上の交通事故被害者の方からのご依頼を解決してきました。
その中で、数多くの後遺障害等級を獲得し、適正な補償を実現させてきました。
リンクスでは、後遺障害でお困りの方、適切な後遺障害等級認定を受け、適正な補償をお受け取りになられたい方をはじめ交通事故でお困りの被害者の方のため、無料相談 をさせて頂いておりますので、是非ご利用ください。
このコンテンツの監修
弁護士法人法律事務所リンクス
代表弁護士 藤川 真之介
交通事故の被害者の救済に取り組む。特に後遺障害等級の獲得に注力し、担当した裁判例が交通事故専門誌「自保ジャーナル」2048号等多数掲載。京都大学法学部卒業。2007年弁護士登録(日弁連登録番号35346)。京都弁護士会所属。2016年に交通事故被害者のための法律事務所として弁護士法人法律事務所リンクス(日弁連届出番号1030)創設。





