交通事故の被害者請求とは?自賠責保険使うとどうなる?デメリット・支払までの期間は?
自賠責保険金を迅速に受け取る
被害者請求は弁護士に相談
自賠責保険の被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者の自賠責保険会社に自賠責保険金を直接請求する手続きです。
交通事故の被害者となった際、加害者の任意保険会社から治療費や慰謝料を受け取るのが一般的ですが、次のような場合には自賠責保険を使うことが有効です。
- 加害者が任意保険に加入していない
- 加害者が責任を否定しているので任意保険が対応してくれない
- 被害者の過失が大きいので任意保険が対応してくれない
- 加害者の任意保険を通さずに後遺障害等級の認定を受けたい
- 加害者と示談する前に自賠責保険の後遺障害保険金を受け取りたい
このページでは、法律事務所リンクスの交通事故に強い弁護士が、交通事故の被害者請求とは、自賠責保険を使うとどうなる、被害者請求のデメリット、被害者請求をした方がよい場合、被害者請求のやり方・支払までの期間、自賠責保険の被害者請求を弁護士に依頼するメリットなどについて詳しく解説します。交通事故に遭った際のスムーズな対応を目指すため、ぜひ参考にしてください。
自賠責保険の慰謝料については、「自賠責保険の慰謝料!4300円?8400円?通院日額を2倍にする方法?」をご覧ください。
自賠責保険と任意保険のどちらを使うかは、「自賠責保険と任意保険どっちを使う?違いや優先順位は?」をご覧ください。
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交通事故の被害者請求とは
被害者請求とは、交通事故の被害者が直接、加害者が加入する自賠責保険会社に請求を行う方法です。
被害者が直接請求するので「直接請求」だとか自賠法16条を根拠としているため「16条請求」と呼ばれたりします。
被害者請求で支払われる保険金には、次のものがあります。
種類 | 費目 | 限度額 |
傷害保険金 | 治療費 | 120万円 |
後遺障害保険金 | 後遺障害逸失利益 | 75万円~4000万円 |
死亡保険金 | 死亡逸失利益 | 3000万円 |
一般的に、被害者は加害者の任意保険から治療費や休業損害の支払を受けることが多く、自賠責保険に直接請求するということは少ないかもしれませんが、一定の場合には、自賠責保険を使う方がよいことがあります。
そこで、交通事故の被害者が自賠責保険を使うとどうなるかを説明します。
自賠責保険を使うとどうなる?
交通事故の被害者が自賠責保険を使うと、次のようなメリットがあります。
- 任意保険が対応しない場合でも対応してくれる
- 任意保険を関与させずに後遺障害等級認定を受けられる
- 示談前に後遺障害保険金を受け取ることができる
① 任意保険が対応しない場合でも対応してくれる
加害者が任意保険に加入していない場合や加害者が責任を否定していたり被害者の過失が大きかったりして任意保険が対応してくれない場合でも、自賠責保険が加害者に何の落ち度もないと判断した場合を除いて、被害者を救済するために保険金を支払ってくれることが多いです。
② 任意保険を関与させずに後遺障害等級認定を受けられる
後遺障害等級の認定には、任意保険に任せる方法と自賠責保険に直接請求する方法があります。
後遺障害等級の認定を任意保険に任せる方法は、任意保険が資料も集めてくれるので手間はかからないのですが、被害者の後遺障害を証明するのに有利な資料を積極的に集めてくれるわけではないですし、手続きがどこまで進んでいるかが見えないので、お勧めはしません。
適切な後遺障害等級の認定を受けるには、被害者が後遺障害に詳しい弁護士に依頼して、自賠責保険に直接請求することをおすすめします。
この場合、弁護士は、後遺障害を証明するのに有利な資料を集めたり、自賠責保険からの質問に対応してくれますので、適切な後遺障害等級を獲得しやすくなります。
③ 示談前に後遺障害保険金を受け取ることができる
後遺障害の補償について、加害者の任意保険から支払ってもらおうとすると、示談する必要があります。
これに対し、自賠責保険に被害者請求した場合には、後遺障害の保険金を示談前に受け取ることができます。
自賠責保険の被害者請求のデメリット
自賠責保険の被害者請求のデメリットは次のとおりです。
- 自賠責保険は被害者請求の適切なやり方を教えてくれない
- 被害者請求をするには自身で資料を集めないといけない
- 被害者請求をすると任意保険は対応してくれなくなることが多い
① 自賠責保険は被害者請求の適切なやり方を教えてくれない
被害者請求には適切なやり方がありますが、自賠責保険は適切なやり方を教えてはくれません。
不適切なやり方で申請して結果が出てしまうと、やり直しが大変になります。
② 被害者請求をするには自身で資料を集めないといけない
自賠責保険から治療費や休業損害の支払を受けるには、診断書と診療報酬明細書を提出する必要がありますが、被害者請求の場合、このような資料は被害者自身が集めなければなりません。
これに対し、任意保険が治療費や休業損害を支払う場合、これらの資料は任意保険が集めてくれるので、手間がかかりません。
③ 被害者請求をすると任意保険は対応してくれなくなることが多い
被害者が、任意保険から治療費の支払を受けて通院する場合、任意保険は被害者の病院に支払った治療費を自賠責保険から回収することになります(これを「加害者請求」といいます。)。
この場合に、治療中の被害者が、自賠責保険から慰謝料の支払いを受けようと被害者請求をすると、任意保険としては自賠責保険から治療費の全額を回収できなくなる可能性があるので、被害者への対応を中止することがあります。
このようなことが起きるのは、自賠責保険が支払う治療費や慰謝料といった傷害部分の合計額は120万円という限度があるからです。
このように、自賠責保険の被害者請求にはデメリットもありますので、使用する際には交通事故に詳しい弁護士に相談するのが望ましいです。
では、被害者請求のメリットとデメリットを踏まえ、どのような場合に被害者請求をしたらよいのでしょうか。
被害者請求をした方がいい場合
被害者請求をした方がいいのは次のような場合です。
- 加害者が任意保険に加入していない場合
- 加害者が責任を否定しているので任意保険が対応してくれない場合
- 被害者の過失が大きいので任意保険が対応してくれない場合
- 加害者の任意保険を通さずに後遺障害等級の認定を受けたい場合
- 加害者と示談する前に自賠責保険の後遺障害保険金を受け取りたい場合
① 加害者が任意保険に加入していない場合
加害者が任意保険に加入していないが、自賠責保険には加入しているという場合には、被害者請求を検討する必要があります。
もっとも、被害者の方で人身傷害保険を利用できる場合には、人身傷害保険が治療費や休業損害を支払ってくれるので、人身傷害保険を利用するのが便利です。
② 加害者が責任を否定しているので任意保険が対応してくれない場合
加害者が責任を否定しているので任意保険が対応してくれない場合にも、被害者請求は有効ですし、人身傷害保険を利用できる場合には利用するのも便利です。
もっとも、被害者が弁護士に依頼をすれば、加害者が責任を認めて任意保険が対応を開始することもありますし、自賠責保険には限度額があるため、いずれ任意保険に対応させる必要が出てくるので、早めに交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。
③ 被害者の過失が大きいので任意保険が対応してくれない場合
被害者の過失が大きいので任意保険が対応してくれない場合にも、被害者請求は有効ですが、被害者の過失が7割以上となる場合には、自賠責保険金が減額されることに注意が必要です。
被害者の過失が大きい場合でも、加害者の過失割合分の損害賠償金については、加害者の任意保険に請求できますが、自賠責保険で賄える場合には、請求することはできません。
被害者の方で人身傷害保険を利用できる場合には、人身傷害保険が治療費や休業損害を支払ってくれるので、人身傷害保険を利用するのが便利です。
特に、人身傷害保険は、被害者の過失割合分の損害賠償金も支払ってくれるので、被害者の過失が大きい場合には大変助かる保険になっています。
④ 加害者の任意保険を通さずに後遺障害等級の認定を受けたい場合
適切な後遺障害等級の認定を受けるには、被害者が後遺障害に詳しい弁護士に依頼して、自賠責保険に直接請求するのが望ましいです。
弁護士はが後遺障害を証明するのに有利な資料を集めたり、自賠責保険からの質問に対応する方が、適切な後遺障害等級を獲得しやすくなります。
詳しくは、「後遺障害認定とは?厳しい?交通事故で後遺症認定されないへの対処法」をご覧ください。
⑤ 加害者と示談する前に自賠責保険の後遺障害保険金を受け取りたい場合
加害者との示談交渉が続いている間は、後遺障害に関する賠償金を受け取ることができないのが原則です。
自賠責保険に被害者請求した場合には、後遺障害の保険金を示談前に受け取ることができます。
自賠責保険の被害者請求のやり方・流れと必要書類
被害者請求のやり方・流れ
自分で被害者請求をする場合
自分で被害者請求をする場合の流れは次の10ステップです。
- 被害者自身が加害者の自賠責保険に連絡して請求書類を取り寄せる
- 被害者自身が請求に必要な資料を収集して提出する
- 自賠責保険が不足資料がないかをチェックする
- 不足資料があれば被害者自身が収集して提出する
- 自賠責保険が損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所に提出書類を送付する
- 自賠責調査事務所が損害の調査をする
- 調査に必要な書類があれば被害者自身が収集して提出する
- 自賠責調査事務所が調査結果を自賠責保険に報告する
- 自賠責保険が調査結果に基づいて自賠責保険金を支払う
- 調査結果や支払われる保険金に不服があれば被害者自身が異議を申し立てる
弁護士に依頼して被害者請求をする場合
弁護士に依頼する場合は、被害者請求の10ステップの大部分を弁護士が代行します。
一部の書類の取得などをお願いされることもありますが、それ以外に関しては、基本的に待機しているだけで手続きが完了します。
被害者請求の必要書類
被害者請求でよく必要になる書類と入手方法を以下にまとめます。
必要書類 | 入手方法 |
自動車損害賠償責任保険支払請求書 | 自賠責保険から取り寄せた書式に記入 |
交通事故証明書 | 自動車安全運転センターから取得 |
事故発生状況報告書 | 自賠責保険から取り寄せた書式に記入 |
診断書・診療報酬明細書 | 病院など受診した医療機関から取得 |
死亡診断書 | 死亡診断をした病院から取得 |
施術証明書 | 施術を受けた整骨院や鍼灸院などから取得 |
印鑑証明書 | 住所のある市役所で取得 |
レントゲン写真等 | 撮影した病院で取得 |
休業損害証明書・源泉徴収票 | 会社に作成発行してもらう |
通院交通費明細書 | 自賠責保険から取り寄せた書式に記入 |
付添看護自認書 | 自賠責保険から取り寄せた書式に記入 |
委任状 | 弁護士に依頼する場合に作成 |
必要書類は事故の内容によって増えたり、変わったりするので、迷ったら弁護士などの専門家に相談しましょう。
被害者請求の支払いまでの期間
被害者請求の支払いまでの期間は、傷害部分については30日以内に調査が終了する案件が99%であるとのことですが、後遺障害部分については30日以内は73.7%、60日以内が87.7%、90日以内が94.4%で、残りの5.6%は調査終了までに90日を超えるとのことです(損害保険料率算出機構の「2023年度(2022年度統計)自動車保険の概況」)。
なお、死亡事故の場合は、30日以内は85.8%、60日以内が93.5%、90日以内が96.4%で、残りの3.6%は調査終了までに90日を超えるとのことです。
自賠責保険の被害者請求が拒否される場合
自賠責保険の被害者請求は、次のような場合に保険金の支払を拒否されます。
一度被害者請求が拒否されてしまうと、その後の損害賠償請求に不利に働きますので、下記の判断が微妙な事案では、被害者請求の前に弁護士に相談することをお勧めします。
自賠責の判断 | 支払を拒否される保険金 |
加害者に過失がない | 全保険金 |
事故と傷害の因果関係の証明がない | 全保険金 |
事故と後遺障害の因果関係の証明がない※ | 後遺障害保険金 |
事故と死亡の因果関係の証明がない※ | 死亡保険金 |
※因果関係の証明はできていないものの、因果関係がないとまではいえない場合には、5割の減額をして支払う場合があります。
具体的には、「被害者が既往症等を有していたため、死因又は後遺障害発生原因が明らかでない場合等、受傷と死亡及び受傷と後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合は、死亡による損害及び後遺障害による損害について、積算した損害額が保険金額に満たない場合には積算した損害額から、保険金額以上となった場合には保険金額から5割の減額を行う。」とされています。
これ以外にも次のような場合に減額されます。
自賠責保険の重過失減額
自賠責保険は、被害者の救済を図るため、被害者の過失が小さい場合には保険金を減額しませんが、被害者の過失が7割以上となる場合には、次のとおり減額をします。これを重過失減額といいます。
被害者の過失割合 | 減額割合 | |
---|---|---|
後遺障害又は死亡に係るもの | 傷害に係るもの | |
7割未満 | 減額なし | 減額なし |
7割以上8割未満 | 2割減額 | 2割減額 |
8割以上9割未満 | 3割減額 | |
9割以上10割未満 | 5割減額 |
自賠責保険の被害者請求を弁護士に依頼するメリット
このように被害者請求は手間も時間もかかりますので、弁護士に依頼する方がメリットが大きいです。
必要書類を集めたりなどの手間を省ける
弁護士に依頼することで、必要書類の収集や手続きの進行を代行してもらうことができます。
これにより、被害者自身が事故後の治療や生活に専念することができるため、心身の負担を軽減することができます。
後遺障害認定の可能性が高まる
後遺障害認定を受けるには、相手の自賠責保険会社に提出する、申請書類の用意が非常に重要になります。
申請書類の準備を相手の保険会社に任せることもできますが、等級認定を受けるためのベストな書類作りをしてくれるとは限りません。
そこで、被害者が弁護士に依頼し、こちらで必要書類を用意し、相手の自賠責保険会社に直接提出することによって、等級認定を受けるためのベストな書類を用意できます。
結果として、適切な等級で認定を受けられる可能性が高まり、損害賠償金の増額が期待できます。
示談交渉を一任できる
被害者請求を行ったあと、不足している損害賠償金について、相手の任意保険会社と示談交渉をすることがあります。
交通事故後の示談交渉は、被害者にとって大きなストレスとなることが多いです。
弁護士に交渉を一任することで、加害者や保険会社とのやり取りから解放され、納得のいく結果を得ることができる可能性が高まります。
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自賠責保険の被害者請求でよくある質問
被害者請求の時効は?
被害者請求の時効は3年です。ただし、平成22年3月31日以前に発生した事故については2年です。
被害者請求は、時効を迎える前に、早めに手続きをするべきです。
時効の起算日は、保険金の種類によって異なります。
- 傷害保険金:交通事故発生日の翌日から3年
- 後遺障害保険金:症状固定日の翌日から3年
- 死亡保険金:死亡日の翌日から3年
ただし、各保険金について一度請求をすれば、その保険金の請求の時効は更新され、3年の時効が復活します。
また、時効の更新申請をすることで、3年の時効を復活させることができます。
自賠責保険の加害者請求とは?被害者請求との違いは?
加害者請求とは、加害者または加害者が加入する任意保険会社が自賠責保険に請求を行う方法です。
加害者側の任意保険は、まず、被害者に対して損害賠償金を支払います。
その後、本来は自賠責保険が支払うはずだった分を、自賠責保険会社に対して請求します。
被害者請求と加害者請求の流れの違いを簡単にまとめます。
被害者請求 | 加害者請求 |
①被害者が、加害者の自賠責保険会社に対して、請求を直接請求を行う ②加害者の自賠責保険会社から、被害者に対して支払いが行われる | ①被害者と加害者で示談をして被害者への支払金額を決める ②被害者に対して示談金を加害者が一括で支払う ③加害者が一括で支払ったもののうち、自賠責保険から支払われるはずだったものに関して、加害者(または加害者の保険会社)が、自分(加害者)の自賠責保険に請求する ④加害者の自賠責保険会社から、加害者に対して立て替え分の支払いが行われる |
被害者請求の場合、被害者自身が加害者の自賠責保険に対して請求する手間が生じますので、例えば治療費や慰謝料等の傷害部分については、加害者の任意保険会社から支払を受けて、自賠責保険への請求については加害者の任意保険に任せることが多いです。
これに対し、後遺障害部分について、加害者の任意保険から支払ってもらおうとすると、示談する必要があるため、示談の前に一部でも金銭を受け取るには、自賠責保険に被害者請求をする必要があります。
まとめ
被害者請求は、交通事故の被害者が、直接加害者の自賠責保険に対して損害賠償請求をする方法です。
自賠責保険は、手続きが認められれば、示談など必要なく、機械的に支払いを行います。相手方の任意保険会社との示談交渉が進まず、示談金が受け取れずに困っている状況などでは、まず被害者請求を行うことで、損害賠償金の一部を得ることができます。
被害者請求は自分で手続きをしなければいけないため、一般の人が行うには少々大変化もしれません。もし手続きの中でわからないことがあったら、相手の自賠責保険会社や、弁護士などの専門家に相談しましょう。
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このコンテンツの監修
弁護士法人法律事務所リンクス
代表弁護士 藤川 真之介
交通事故の被害者の救済に取り組む。特に後遺障害等級の獲得に注力し、担当した裁判例が交通事故専門誌「自保ジャーナル」2048号等多数掲載。京都大学法学部卒業。2007年弁護士登録(日弁連登録番号35346)。京都弁護士会所属。2016年に交通事故被害者のための法律事務所として弁護士法人法律事務所リンクス(日弁連届出番号1030)創設。