【交通事故Q&A】<2級の慰謝料>後遺障害2級の慰謝料・逸失利益・介護費の相場が知りたいのですが?
<2級の慰謝料>後遺障害2級の慰謝料・逸失利益・介護費の相場が知りたいのですが?
後遺障害2級に対する適切な補償(慰謝料・逸失利益・介護費)とは?
後遺障害の補償は、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益から成り立っています。そして、介護・介助が必要な場合には、介護・介助費用が支払われることになります
後遺障害2級に対する適切な補償=後遺障害慰謝料+後遺障害逸失利益+介護・介助費用
後遺障害2級の後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは後遺症が残ったことで受けた精神的苦痛に対する補償で、後遺障害2級の場合は、後遺障害等級と介護の必要性によって決まります。
介護の必要性がない場合、後遺障害2級の慰謝料の相場は弁護士基準で2370万円~2400万円とされていますが、介護の必要性がある場合には3000万円を超える慰謝料(近親者の慰謝料を含む)が認められることもあります。
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後遺障害2級の後遺障害慰謝料額の相場
後遺障害等級2級に該当する場合、自賠責基準と弁護士基準での後遺障害慰謝料の金額を比べたのが以下の表です。
慰謝料の基準 | 後遺障害慰謝料の金額の目安 |
---|---|
自賠責基準 | 998万円(介護なしの場合) 1203万円(要介護の場合) |
弁護士基準 | 2,370万円 |
自賠責基準で慰謝料が増額される要介護の場合で比較しても、自賠責基準と弁護士基準では、金額が2倍近く異なることがわかります。
交通事故慰謝料の3つの基準
交通事故慰謝料の金額を算定する基準は、実は1つではなく、全部で3つの基準があります。自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準とも呼ばれます)の3つです。
自賠責基準
自賠責基準とは、自動車の保有者が強制加入しなければならない自賠責保険ににおいて規定されている基準です。
自賠責保険は交通事故の被害者の最低限の救済を目的とする保険なので、自賠責基準の金額は他の基準と比べて低くなります。
任意保険基準
任意保険基準とは、自動車保険などを取り扱う保険会社が独自に設定している基準です。
従来は統一された基準がありましたが、規制緩和によって統一基準が撤廃されたため、保険会社ごとに基準を設定しています。金額の目安としては自賠責基準よりは高く、弁護士基準よりは低くなります。
弁護士基準(裁判所基準)
弁護士基準とは、交通事故に関する過去の裁判例をもとに算定されている基準です。
弁護士に依頼した際によく用いられることから、弁護士基準と呼ばれます。また、裁判でも採用される基準なので、裁判所基準と呼ばれることもあります。
弁護士基準は3つの基準の中では金額が最も高くなります。
どの基準が適用されるかによって、同じ交通事故でも得られる慰謝料の金額が変わるのがポイントです。
金額は自賠責基準が最も低く、弁護士基準が最も高いです。任意保険基準はその中間の金額になります。
交通事故慰謝料 1日あたり金額の違いを比較
たとえば、交通事故慰謝料のうち入通院慰謝料について見てみると、通院日数が同じでも、どの基準が適用されるかによって1日いくらもらったが変わってきます。
任意保険基準の金額はそれぞれの保険会社によって具体的な金額が異なるので、以下の表では自賠責基準と弁護士基準を比較してみます。
慰謝料の基準 | 入通院慰謝料の金額の目安 |
---|---|
自賠責基準 | 1日あたり4300円 ※2020年3月31日以前の事故は 4200円 |
弁護士基準(むちうちなどの軽症の場合) | 1日あたり約6333円 |
弁護士基準(骨折などの重症の場合) | 1日あたり約9333円 |
弁護士基準では、自賠責基準との比較で、軽症で1日あたり約1.5倍、重症で2.17倍もの金額になることがわかります。
ところが、交通事故の示談金の交渉において、相手方の保険会社が提示してくる任意保険基準の金額相場は、自賠責保険基準と同程度。「保険会社任せで交通事故の示談を進める」というのは、いわば裁判所が請求を認めている慰謝料額を、被害者が自ら放棄するのとあまり変わらない話なのです。
弁護士基準(裁判所基準)で後遺障害慰謝料などを受け取りたい場合は、交通事故被害に強い弁護士に相談することが不可欠になります。
交通事故慰謝料 弁護士基準の算定方法
後遺障害慰謝料などの交通事故の慰謝料を計算するための基準として、弁護士などの実務家の間ではよく「赤い本」と呼ばれる書籍が用いられます。赤い本の正式名称は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」といいます。本の表紙に赤系統の色が使用されていることから、通称として赤い本と呼ばれています。
たとえば、以下は、赤い本に掲載されている死亡慰謝料の金額ですが、実際に弁護士基準における死亡慰謝料の相場となっています。
被害者の立場 | 死亡慰謝料の金額の目安 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親または配偶者 | 2500万円 |
その他の立場(子や高齢者など) | 2000万円~2500万円 |
赤い本自体は、弁護士以外の方でも入手可能ですが、この本を用いて一般の方が保険会社と交渉するのは現実的ではありません。
赤い本には交通事故の裁判における重要な判例や、事故の形態別の過失割合なども掲載されており、示談交渉の実務では、こうした過去の膨大な事例もふまえて論理構築し、交渉を行っているからです。
後遺障害2級の後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺症が将来の仕事・家事に与える影響に対する補償です。次の3つの数字を掛け合わせて、補償額を決めることになります。
- 被害者の収入(職がない方の場合は働いたら得られる見込みのある収入)
- 後遺障害等級ごとに決まっている労働能力喪失の割合
- 後遺障害が将来の仕事・家事に影響を及ぼす期間(労働能力喪失期間)に対応するライプニッツ係数
2級の場合、②は100%、③は症状固定から67歳までとされていますので、後遺障害の内容や被害者の収入・年齢によって、次のような後遺障害逸失利益が認められることになります。
なお、無職の場合は働いていないので逸失利益は認められないと思われるかもしれません。
しかし、事故当時は無職でも将来的に労働していた可能性(労働意欲と労働能力があるなど)が認められれば、平均給与額や失業前の収入などを基準として、逸失利益が認められることがあります。
20代男性(平均賃金)25歳547万×1×17.4232=9530万
収入・仕事 | 年齢 | 逸失利益 |
---|---|---|
主婦(女性平均賃金) | 40歳 | 372万×1×14.6430=5447万 |
会社員(年700万) | 55歳 | 700万×1×8.8633=6204万 |
後遺障害等級認定の申請の流れ
後遺障害慰謝料を得るには、自賠責保険の「損害料率算出機構」という機関に対して、後遺障害認定の申請をする必要があります。
後遺障害は障害の程度によって等級があり、後遺障害等級といいます。後遺障害等級は第1級から第14級までの14等級があり、数字が小さいほど症状が重くなります。
後遺障害認定の申請方法は、被害者が自分で申請をする「被害者請求」と、保険会社に申請を任せる「事前認定」の2種類があります。
被害者請求は後遺障害の証拠になるような診断書や医師の意見書などの資料を自分で集める必要がありますが、適切な資料を集めることができれば、その分だけ適切な等級に認定を受けやすくなるメリットがあります。
後遺障害に認定されるまでの平均的な期間は、申請から1〜2ヶ月程度です。ただし、併合(系列の異なる複数の後遺障害があること)など審査が難しいケースの場合は、それ以上の期間がかかることもあります。
後遺障害2級の認定を受けることによるデメリットは?
後遺障害に認定されることによる明確なデメリットは基本的にありません。
ただし、等級認定を受ける上では症状固定をする必要があり、これに伴い、治療費や休業損害が打ち切りが問題となります。
事故後も入院が続くケースや要介護となった場合、治療費や休業損害が打ち切られると、後遺障害の補償や介護費の支払を受けるまでの間、多額の自己負担が発生してしまう可能性があります。
そこで、このような場合には、症状固定前の段階で、症状固定後すぐに自賠責保険金(2級の場合は最高で3000万円が支給されます)を請求できるよう準備をしておく、障害者総合支援法や介護保険の利用の準備をしておくなど症状固定前の準備が肝心になります。このような場合には、できる限り早い段階で、後遺障害等級認定に精通した弁護士に無料相談することをお勧めします。
後遺障害2級で労災に請求できる可能性がある
会社の仕事で営業中に交通事故に巻き込まれるなど、労働中の事故が原因で後遺障害が残ってしまった場合は、労災に対しても補償を請求することができます。
労災の主な補償内容は以下のとおりです。
- 療養給付(交通事故の負傷を治療するための給付)
- 休業給付(交通事故によって働けなくなった場合の給付)
- 遺族給付(交通事故で被害者が亡くなった場合の遺族への給付)
- 障害給付(交通事故で後遺障害が残った場合の給付)
障害給付の内容としては、障害特別支給金や障害補償給付金があります。金額は後遺障害の等級によって異なり、後遺障害2級の場合の金額の目安は以下のとおりです。
後遺障害の等級 | 障害特別支給金の目安 | 障害補償給付金の目安 |
---|---|---|
後遺障害2級 | 320万円 | 給付基礎日額の277日分 |
なお、労災の補償には後遺障害慰謝料は含まれていないので、労災に対して後遺障害慰謝料を請求することはできません。
後遺障害2級の介護・介助費用
① 近親者による付添の場合
付添介護が必要な場合には、日額8000円程度が原則ですが、具体的看護の状況により増減します。
介護は必要ではないものの、日常生活動作の支援等の付添介助が必要な場合には、日額2000円~3000円程度が認められることがありますが、介助の必要性は第三者にはわかりにくいので、きちんと証明する必要があります。
これらの日額が、症状固定時の年齢から平均余命までの期間、認められることになります。
② 職業付添人の場合
実費が原則で日額1万円~3万円程度ですが、職業付添人が付き添う必要性がある場合に限ります。
現に職業付添人が付いている場合には認められることが多いですが、そうでない場合には、近親者が高齢になるまで(一般的には近親者が67歳になるまで)は介護するものと考えて、付添介護費が計算されます。
年齢性別(平均余命) | 近親介助 | 近親介護 | 職業介護 |
---|---|---|---|
25歳男性(56年) | 2047万 | 5459万 | 2.04億 |
40歳女性(47年) | 1968万 | 5250万 | 1.96億 |
55歳男性(27年) | 1603万 | 4274万 | 1.60億 |
交通事故に強い弁護士への無料相談が不可欠
一般的な補償の基準は以上で説明したとおりですが、保険会社は
- このような重篤な後遺障害の場合には余命が短くなるので、平均余命までの介護費は認められない
- 障害者支援や介護保険を利用することで介護費の自己負担は少なくなる
- 職業付添人による介護の必要性は認められない
など、なにかしらの理由をつけて、できる限り介護費を減らそうとします。
また、一般的に後遺障害の等級認定が認められる確率は、すべての等級を含んだ値で約5%程度と言われています。その中でも、2018年度の後遺障害等級別認定数を見ると、後遺障害2級の認定を受けた人は別表1(要介護)・別表2(介護不要)を合計しても0.97%。(損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」)もともと狭き門である後遺障害等級認定の中でも、後遺障害2級の認定には、その事態の重大さから非常に慎重で、厳密な審査が行われます。
重篤な被害を巡り、弁護士基準(裁判所基準)での後遺障害の補償を受け取るには、交通事故被害に強い弁護士への無料相談が不可欠です。遠慮なくリンクスの無料相談をご利用ください。
後遺障害2級の認定基準
後遺障害等級2級の認定基準は、以下のいずれかに該当する場合です。介護の必要の有無で2つの基準が設定されています。
介護が必要な場合
- 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
- 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
介護の必要がない場合
- 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
- 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
- 両上肢を手関節以上で失つたもの
- 両下肢を足関節以上で失つたもの
後遺障害2級の主な解決事例
近親者介助を要する学生(40%の過失がなければ賠償金1億7500万)
【高次脳等2級】事故の責任は被害者学生にあり就職して自立も可能と支払を拒否する保険会社に、介助費用等を含め1億円超の賠償をさせた事例【将来の介護費用】
この記事の筆者
弁護士 藤川真之介
弁護士法人法律事務所リンクス(京都弁護士会)代表弁護士。交通事故の被害者の救済に取り組む。特に後遺障害等級の獲得に注力し、担当した裁判例が交通事故専門誌「自保ジャーナル」2048号等に掲載。京都大学法学部卒業。2007年弁護士登録(登録番号35346)。