遺産相続の横領使い込みで泣き寝入りは嫌!親の通帳の調査方法を解説
遺産の使い込みはどのように証明すればよい?
遺産の使い込みとは何か?
遺産の使込みとは、相続財産の一部である預金の名義人の財産管理能力が低下しているのをいいことに、預金を無断で引き出してしまうことです。預金の名義人が亡くなった後で、相続財産を調査した際に、預金の取引履歴を見た相続人が高額の不自然な出金を見つけて問題となることが多いため、遺産の使い込みといわれています。
遺産の使い込みは罪?
遺産の使い込みが認められれば窃盗罪又は横領罪が成立する可能性がありますが、配偶者・直系血族・同居の親族による窃盗及び横領は刑が免除されますので、警察は動いてくれないのが現実です。
遺産の使い込みの返還を求めるには?
相続人が、遺産の使い込みの返還を求めることができるのは、使い込んだ人が亡くなられた被相続人の財産に損失を与えて不当に利得したからであり、これを不当利得返還請求と言います。
相手方が遺産を使い込んんで不当に利得したことを認めてくれれば、不当利得の返還を求めるだけでよいですが、遺産である預金を引き出したことや使い込んだことを認めてくれない場合に不当利得の返還を求めるには、次の3つの事実を証明する必要があります。
- 預金が引き出されたり解約されたりして、遺産にはないこと(引き出しの事実)
- 預金が使い込まれた時期にその預金を管理していたこと(遺産の管理者であったこと)
- 預金の引き出しや解約が被相続人の同意を得ずになされたこと(引き出しが無断であったこと)
逆に言えば、遺産を使い込まれたと疑われている人は、①か②か③のどれかの反論に成功すれば、使い込みを否定することができます。
遺産を使い込まれたと疑われている方は「遺産の使い込みを疑われているが潔白を証明したい」をご覧ください。
以下では、使い込まれた遺産の返還を求める人が①預貯金等の引き出しの事実、②遺産の管理者であったこと、③預貯金等の引き出しが無断であったことをどのように証明するかを説明させて頂きます。
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遺産である預金の使い込みの証明方法
1 引き出しの事実の証明
取引履歴の取寄せ
遺産である預金の使い込みを疑われている人が相続財産を開示してくれればよいですが、そう易々と自分が管理している相続財産を開示してくれるとは限りません。
また、その相続人が相続財産を開示してくれたとしても、巧妙に遺産が隠されている可能性がありますし、遺産を使い込んだことを認めない可能性があります。
そのような場合には、自ら預貯金等の取引履歴を取り寄せたり、銀行に調査を掛ける必要があります。
相続人の場合、預貯金等が存在する(した)金融機関名(と支店名)を知っていれば、その金融機関に開示請求することで、取引履歴を取り寄せることができますが、自分で金融機関所定の書類を集めなければなりませんので、面倒かもしれません。
弁護士の場合、相続人の代理人として、被相続人の取引履歴を取り寄せることが可能です。ただし、取引履歴は取り寄せ時点からさかのぼって10年分しか請求することができませんので、10年使く前に引き出された可能性があるのであれば、早めに取寄せなければなりません。
取引履歴の調査
取引履歴を取り寄せると、不自然な出金や解約がないかを調査することになります。
一度に多額の出金や継続的に不自然な出金があった場合、不必要な解約があった場合には、使い込みが疑われます。
取引履歴には様々な情報が集約されています。例えば、どの支店で出金されたのか、その出金は窓口なのかATMなのかなどは、誰が引き出したのかのヒントになります。
また、他の金融機関の被相続人名義の口座への振込履歴がある場合には、その金融機関に被相続人名義の口座が残っている可能性が考えられますし、被相続人が年金受給者であったにもかかわらず取引履歴に年金の入金記録がない場合には、やはり他の金融機関に被相続人名義の口座がある可能性が考えられます。
このような相続財産を綿密に調査するには、証拠読みのプロである弁護士が必要です。
2 遺産の管理者の証明
遺産の使込みを追及したい側の証明
その人が遺産を使い込んだことを証明しなければ、別の人が遺産を使い込んだ可能性が残るため、使い込んだ遺産を返還するよう請求することはできません。
とはいえ、遺産を使い込んだことを直接証明することは難しいことが多いので、遺産が使い込まれた時期にその遺産を管理していたことを証明することで、別の人が遺産を使い込んだ可能性を否定することが必要となります。
相手方が遺産である預金が使い込まれた時期に、その預金口座を管理していたことについては認めてくれる場合も多いです。この場合には、被相続人が出金に同意していたのか、無断で引き出したのかという問題になります(3の「無断引き出しの証明」参照)。
これに対して、遺産が使い込まれた時期に、遺産である預金を誰が管理していたことを否定された場合には、証明のハードルが上がります。被相続人自身に遺産の管理能力がなく、唯一の同居人である相手方が遺産を管理していたとしか考えられないという場合には、相手方が遺産の管理者であったことは否定できないでしょうが、微妙なケースも多いです。
リンクスの経験した事例では、相手方が預金を管理していたのを否定したのに対し、中立の親族の証言から被相続人が証券被害に遭っていたこと、医療機関の診療記録や介護を担当していたケアマネージャーへの照会で被相続人が認知症であったこと、相手方のブログで預金が引き出された後で豪華な海外旅行に何度も掛けていたことなどを証明することで、裁判所に相手方が遺産を管理していたことを認めてもらい、1000万円を超える使い込みを認めてもらったことがあります。
このように、医療機関の診療記録や介護の記録が大事になることが多いですが、保存期間がありますので、くれぐれもご注意ください。
遺産の使込みを疑われている側の反証
反対に、遺産の使い込みを否定したい側としては、
・遺産の使い込みがあったとされる時期に遺産を管理していたのは被相続人本人であったこと(その時期の本人には遺産の管理能力があったこと)
・遺産を管理していたのは同居していた別人であったこと
などを証明して、反論していくことになります。
3 無断引き出しの証明
1の引き出しの事実と2の遺産の管理者であった事実が証明されれば、預貯金等の引き出しの事実はほぼ明らかとなったことになります。
しかし、預貯金等を引き出していたとしても、本人の同意を得ていれば何の問題もありませんので、無断の引き出しであったことを証明する必要があります。
もっとも、1の引き出しの事実と2の遺産の管理者であった事実の証明によって、預貯金等の引き出しはほぼ明らかとなっているわけですから、遺産の使い込みを否定したい側としても、被相続人にどのような形で預貯金等の引き出しの了承を得ていたのかを積極的に明らかにしていかなければなりません。
例えば、
・本人からその都度了承をとっていたのか、包括的な了承を得ていたのか
・引き出した預貯金等を本人等に渡していたのか、渡しはせずに本人のために使用していたのか
・本人のために使用していたとすれば、その使途は何だったのか
・贈与を受けたのだとすれば、贈与の証拠は何なのか
などを説明する必要があります。
遺産の使い込みの時効は?
遺産の使い込みの返還を求める法的根拠は、不当利得返還請求です。民法では、不当利得の返還を求める人が不当利得(使い込み)を知ってから5年、不当利得(使い込み)が発生してから10年が経過すると、消滅時効になるとされていますので、過去の使い込みの返還を求めるのであれば、できる限り早く取引履歴を集めて、返還請求をする必要があります。
なお、遺産の使い込みが不法行為と評価できる場合には、損害賠償として返還を求めることができます。民法では、損害賠償を求める人が不法行為(使い込み)を知ってから3年、不法行為(使い込み)が発生してから20年が経過すると、消滅時効になるとされています。
遺産相続に強い弁護士への無料相談が必要
このように、遺産の使込みの証明には、様々な難しい問題がありますので、遺産相続に強い弁護士への無料相談をされることをお勧めしております。
弁護士は、遺産相続の手続にも紛争にも精通しておりますので、遺産相続の最初から最後までトータルサポートさせて頂くことが可能です。
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