土地建物や不動産の評価と遺留分の計算方法を解説
不動産相続が遺留分侵害となる場合とその解決策は?
土地建物や不動産の相続・生前贈与が遺留分の侵害となる場合
特定の相続人に土地建物を相続させる遺言があったり、不動産を生前贈与したりした場合、他の相続人の遺留分を侵害することになるため、遺留分トラブルが発生することが多いです。
このページでは、次のことを説明します。
- 遺留分侵害額請求における土地建物の評価方法
- 不動産の相続・生前贈与がある場合の遺留分の計算方法
- 不動産の相続・生前贈与による遺留分トラブル事例
1 遺留分侵害額請求における土地建物の評価方法
不動産の評価額を確定する必要性
土地建物の相続や不動産の生前贈与が遺留分侵害となるか否かが問題となる場合、まず必要となるのは不動産の評価額の確定です。
不動産の評価額が確定しなければ、遺産総額が確定しませんし、遺留分がいくらになるかの計算ができないからです。
不動産の評価額を確定させるには、遺留分を請求する側と遺留分を請求された側が不動産の評価額で合意すればよく、次のような資料を参考にしながら合意に至ることが多いです。
- 固定資産評価額(土地建物)
- 路線価(土地)
- 不動産会社の査定額
これらは①②は不動産の売却価格である時価よりも低く、③は不動産の売却価格であるじかに近いと言われています。
遺留分を請求する側に有利な評価方法
遺留分を請求する側としては、不動産の価値が高い方が遺産総額が高くなり、遺留分も割合的に高くなり、遺留分侵害額として請求できる額も高くなりますので、①固定資産評価額や②路線価よりも、③不動産屋の査定額を参考にしたいところです。
遺留分を請求された側に有利な評価方法
これに対して、遺留分を請求された側としては、②固定資産評価額や③路線価で合意できればよいですが、不動産の価値は原則として時価で評価することとなっていますので、遺留分を請求する側の合意を得るのは難しいかもしれません。
不動産の評価で合意できない場合
不動産の評価額で合意できない場合には、遺留分侵害額請求の調停や裁判になることが多く、調停や裁判の席でも折り合えない場合には、不動産の正式な価値を確定するため、不動産鑑定士の鑑定書が必要になりますが、数十万円の鑑定費用がかかることになります。
不動産の査定方法について詳しくお知りになりたい方は、「相続不動産の査定とは?評価額や鑑定の方法を弁護士が解説」をご覧ください。
2 不動産による遺留分侵害における遺留分の計算方法
各相続人の遺留分の額の計算方法
各相続人の遺留分の額がいくらかになるかについては、以下の計算式によって算出します。
①遺留分算定の基礎となる財産額(遺留分算定基礎額)×②各相続人の遺留分割合
そこで、以下では①遺留分算定基礎額の計算方法と②各相続人の遺留分割合をご説明します。
① 遺留分算定基礎額
相続人同士での遺留分侵害額の請求の場合、遺産総額+過去10年分の生前贈与額ということになります(細かい計算方法を知りたい方は、「遺留分の計算方法が知りたい」をご覧ください。)。
不動産の生前贈与で注意しないといけないのは、不動産の生前贈与額は生前贈与時点の評価額ではなく、相続開始時の評価額になるということです。
したがって、不動産の評価額が上がっていれば遺留分は増えますし、不動産の評価額が下がっていれば遺留分は減ることになります。
② 各相続人の遺留分割合
遺留分算定基礎額に下記の表の遺留分の割合を掛けることになります。
相続人の構成 | 各相続人の遺留分 | |||
配偶者 | 子供 | 父母 | 兄弟 | |
①配偶者のみ | 1/2 | |||
②配偶者と子供 | 1/4 | 1/4の人数割 | ||
③配偶者と親 | 1/3 | 1/6の人数割 | ||
④配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | なし | ||
⑤子供のみ | 1/2の人数割 | |||
⑥親のみ | 1/3の人数割 | |||
⑦兄弟姉妹のみ | なし |
遺留分侵害額の計算方法
遺留分の額が決まると、自分の遺留分はどのくらい侵害されているのか(遺留分侵害額)を計算します。
その際、下記の金額を差し引くことになります。
- 遺産分割で取得した額
- 死因贈与・生前贈与で取得した特別受益の額(※10年以上前の贈与も対象!)
注意すべきなのは、相続人に対する生前贈与について、遺留分算定基礎額を計算する際には過去10年分を足せばよいですが、遺留分侵害額を計算する際に差し引く生前贈与等は10年以上前のものも対象になるということです。
3 不動産の相続・生前贈与による遺留分トラブル事例
不動産を相続させる遺言がある場合の遺留分トラブル事例
Aには子供Bと子供Cがいるが、同居しているBに自宅不動産を相続させ、別居のCに預金1000万円を相続させる遺言書を作成して亡くなりました。
Aの死後、Cは次のような主張をして、Bに遺留分を請求しました。
遺留分を請求するCの主張
- 自宅不動産を査定したところ、相続開始時の評価額が4000万円であることが明らかとなったから、Aの遺産総額は自宅4000万円+預金1000万円=5000万円である。
- Cの遺留分は遺産総額5000万円の4分の1の1250万円である。
- Cの相続した額は1000万円であるから250万円分の遺留分が侵害されている。
遺留分を請求されたBの反論
- Aが亡くなった時点の自宅不動産の価値は3000万円のままであるから、遺産総額は自宅3000万円+預金1000万円=4000万円である。
- Cの遺留分は遺産総額4000万円の4分の1の1000万円であるところ、Cは既に1000万円相続しているから、遺留分の侵害はない。
- CはAから100万円の生前贈与を受けているから、自宅不動産の評価が3000万円を少し上回ったとしても、遺留分の侵害はない。
遺留分トラブルの解決方法
遺留分を巡る協議
お互いの主張する評価額に1000万円の開きがありますが、遺留分侵害額の請求としては250万円の開きなので、できれば中間的な解決を図れないか協議したいところですし、生前贈与があるということであればなおさらです。
協議で解決できない場合
協議で解決できない場合には、遺留分侵害額請求の調停や裁判になります。
その他の遺留分請求の一般的な注意点について、遺留分を請求する側の方は「遺留分を請求したい」を、遺留分を請求された側の方は「遺留分を請求された」をご覧ください。
遺産相続に強い弁護士への無料相談が必要
このように遺留分トラブルには様々な難しい問題がありますので、遺産相続に強い弁護士による無料診断を受けられることをお勧めしております。
遺産相続の専門家には、弁護士のほかに、司法書士、税理士がいます。
司法書士は登記の専門家、税理士は税の専門家ですが、法律の専門家ではないため、法的に難しい問題が生じた時に対応ができません。
弁護士は、遺産相続の手続にも紛争にも精通しておりますので、遺産相続の最初から最後までトータルサポートさせて頂くことが可能です。
法律事務所リンクスでは遺産相続問題に強い弁護士が遺留分の無料相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
弁護士費用について
遺留分侵害額請求
取得額 | 着手金 | 成功報酬 |
~300万円に当たる部分 |
0円 |
16.5%+22万 |
~3000万円に当たる部分 |
11% | |
~1億円に当たる部分 | 8.8% | |
1億円を超える部分 | 5.5% |
※1 遺留分の請求が困難な事案では着手金を頂く場合があります。
※2 弁護士費用とは別に実費(各種資料取得費用、通信費等)がかかります。
※3 弁護士費用は消費税込です。
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