賃貸物件の相続で家賃収入はどう分配?アパートマンションはどう分割?
賃貸物件の相続・遺産分割の3つのポイント
賃貸アパート・マンションの相続では次の3つのポイントが大事です。
- 賃貸物件特有の相続手続
- 家賃収入・賃料収入の分配
- 賃貸アパート・マンションの遺産分割協議
賃貸物件特有の相続手続
賃貸マンション・アパートの相続は、通常の不動産とは異なる特殊な相続手続があります。賃貸物件がある場合、次のようなことが問題になります。
- ローンの確認
- 賃料振込口座の変更
- 所得税の準確定申告
ローンの確認
賃貸マンション・アパートを相続する場合、賃貸物件にローンが残っていることがあります。その場合、債権者である金融機関との間で、今後のローンの支払について協議する必要があります。
なお、通常は、賃貸マンション・アパートの資産価値がローンを上回っているため問題ないことが多いですが、全相続財産とすべての債務の額を比較して債務超過であるという場合には、相続放棄を検討する必要がある場合があります。相続放棄の申述は相続開始から3カ月以内にしないといけないので、賃貸物件のローンは早めに確認するようにしましょう。
家賃収入・賃料収入の振込口座の変更
賃料振込口座は亡くなった被相続人名義であることが多いですが、口座が凍結されてしまう可能性があるので、賃料振込口座を変更し、賃借人に通知する必要があります。
では相続人が複数いて、誰が賃貸物件を相続するかが決まっていない場合には、どうすればよいのでしょうか。
遺産分割が完了して誰が賃貸物件を取得するかが決まれば、それ以降の家賃収入は賃貸物件を取得した相続人のものになりますが、遺産分割手続中の家賃収入は法定相続分に従って分配すべきとされています。
そこで、相続人の誰かが代表して賃料振込口座を開設し、諸費用を精算した上で、法定相続分に従って家賃収入を分配してもらうことになります。
家賃収入・賃料収入の分配については、2で詳しく説明します。
所得税の準確定申告
被相続人が亡くなるまでに取得した家賃収入について、相続人は4か月以内に所得税を納めなければならず、これを準確定申告といいます。相続税の申告期限とは異なりますので、ご注意ください。
申告の対象となる家賃収入は、原則として亡くなった日までに支払期日が到達しているものになります。例えば7月10日に亡くなった場合、7月分の家賃は6月末日に支払われているとすると、7月10日の時点で支払期日が到達していますので、6月末日に受領した7月分の家賃収入までが対象になります。
2 家賃収入・賃料収入の分配
遺産分割手続中の賃料はどうすべき?
先程もご説明したように、遺産分割手続中の賃料は法定相続分に従って分配すべきということになります。
遺産分割手続中の賃料は、相続開始後に発生したものなので、遺産分割が完了するまで分配を待つ必要はありません。
むしろ、相続人にとっては、相続開始後に発生した所得になるので、適宜分配してもらわなければ、確定申告をすることができなくて困ってしまうことになります。
賃料を独り占めしようとしている相続人がいる場合には?
賃料を独占しようとしている相続人がいる場合、他の相続人としては、賃料を分配するよう求める権利があります。
しかしながら、裁判でいくら分配するように命令されているわけではないので、賃料を分配しない場合に、強制することはできません。
では、どのような解決方法があるのでしょうか?
賃料の分配請求
リンクスの弁護士は、賃料の分配を求めたい相続人の方から依頼を受け、賃料を独占しようとしている相続人に対し、以下のようなお手紙を差し上げました。
- 賃料を分配すべきこと
- 管理にかかる経費や公租公課があるのであればその内訳を説明すること
- ①と②は所得税の申告にも必要であること
- 賃料を分配しないのであれば訴訟も辞さないこと
- 訴訟を提起した場合には、賃料の差し押さえもありうること
相手方の対応
以上のお手紙を受け取った相手方は、次のようなリスクを感じることになります。
- 弁護士が出てきて訴訟をにおわせていること
- 税金の問題が生じれば税務署とももめかねないこと
- 賃料の差し押さえを受ければ賃借人が出ていきかねないこと
実際、相手方は、すぐに賃料の分配を開始しました。
3 賃貸アパート・マンションの遺産分割
相続財産の中に賃貸マンション・アパートなどの賃貸物件がある場合、普通の不動産と比べて、遺産分割が難しくなることがあります。
それは複数の相続人が取得を希望したり、賃貸アパート・マンションの評価額をめぐって争いが生じたりするからです・
複数の相続人が賃貸物件の取得を希望する場合
相続人が賃貸不動産の取得を希望する理由
複数の相続人が賃貸物件・賃貸マンションの取得を希望する場合にはいくつかのパターンがあります。例えば、以下のような場合です。
- 相続財産に占める賃貸不動産の割合が大きいため、賃貸不動産を分割せざるを得ない
- 賃貸不動産の賃料収入が魅力的なため、他の相続財産ではなく、賃貸不動産が欲しい
賃貸不動産の遺産分割方法
相続財産に占める賃貸物件の割合が大きい場合、次のような方法で遺産分割をすることが考えられます。
①共有名義にして賃料収入を分配する
相続人間で取得割合に合意できればこの方法を採ることが可能です。しかし、将来売却する場合には双方の合意が必要になりますし、管理方法についても協議する必要があります。良好な人間関係がなければこの方法を採ることは難しいでしょう。
②一方が賃貸不動産を取得して、他方に代償金を支払う
賃貸不動産を取得する側に代償金を支払う資力があれば、この方法を採ることが可能です。
③賃貸不動産を売却して分割する
共有も代償金の支払も難しいのであれば、売却するほかありません。
また、相続税の納税資金がない場合で、賃貸不動産を担保に納税資金を借り入れることが難しい場合にも、売却を検討することになります。
このように、賃貸不動産の遺産分割方法は複雑ですので、早めに遺産分割に強い弁護士にご相談されることをお勧めします。
賃貸マンション・アパートの評価額に争いがある場合
収益物件としての査定が必要
賃貸物件の場合、単なる不動産としての価値ではなく、賃料収入を考慮した収益物件としての価値を査定してもらう必要があります。
よくある事例
- 両親を亡くした長女が、長男から賃貸不動産の遺産分割の提案を受けたところ、賃貸不動産の評価は固定資産評価額であった。
- 長女は、長男に不動産会社の査定を取って送ってほしいと依頼した。
- 長男は不動産会社の査定を取って、長女に送ってきた。
- 長女は、長男が最初に賃貸不動産の評価を固定資産評価額で送ってきたことを不審に思い、弁護士に長男が送ってきた不動産会社の査定が妥当か相談することにした。
- 弁護士が査定を確認したところ、賃料収入を考慮しないまま、不動産が評価されていることが分かった。
解決の仕方
リンクスでは、このような場合、提携している不動産会社にお願いして、賃料収入を考慮した収益物件として、賃貸不動産を査定してもらい、長男側に提示するようにしています。
このように、賃貸不動産の評価を巡っては様々な問題があるので、不動産会社とも連携している遺産分割に強い弁護士の無料相談を利用されることをお勧めします。
遺産相続に強い弁護士への無料相談が必要
このように、賃貸不動産の遺産分割には様々な難しい問題がありますので、遺産相続に強い弁護士への無料相談をされることをお勧めしております。
特に、賃貸不動産の場合、不動産会社や税理士との連携が不可欠ですが、法律事務所リンクスはその双方と連携しております。
リンクスでは遺産相続問題に強い弁護士が無料相談を実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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